56.《ネタバレ》 セリフや雰囲気がものすごくリアル。
親と子では考え方も価値観も違い、チラリとのぞく本音で傷つき、また傷つけもする。
血のつながらない家族間ならナーバスにもなるし、血のつながった家族間でも根深いすれ違いはある。
余計なことをしやがってと怒りを溜めたり、なんでわかってくれないのかとイラついたり。
誰が悪いということでもないので、余計に始末が悪い。
そんなギクシャクした空気がビンビン伝わってきて、見ているこちらがいたたまれなくなるくらい。
それでも、愛情がないわけではなく、本当はもっと素直に愛せればいいと思っている。
ただ、いつもちょっと間に合わない、そんな間の悪さが親と子の間に漂っているだけ。
息子が命を落としてまで救った青年を、見つめる両親の姿が痛々しい。
毎年命日に呼ぶ理由に、母親のどうにもならない嘆きと恨みがドロドロと渦巻く。
子が親を思うより、親が子を思うほうが強いのだろう。
静かで地味な映画だけどジワジワとくる。
決して好みの作品とはいえないのだが、なんだか心に残る。
ストーリーは全然違うが、『東京物語』を見たときの感覚にとてもよく似ている。
『結婚できない男』と同じ阿部寛と夏川結衣の組み合わせがいい。
YOU、樹木希林、原田芳雄も家族を好演して、共感を呼ぶ作品になっている。