134.科学者とジャーナリスト、二人の巨大な力に立ち向かう戦いには見応えがあった。
自分の行動が世界を変える力を持つと信じた二人の男達。
タバコ業界のプレッシャーだけでなく、買収問題を巡る会社内部における対立や守秘契約、第三者賠償責任等の法律関係、報道関係者、ジャーナリスト間の駆け引き、FBIを巻きこんだかなり大掛かりでスケールの大きな作品になっている。
そのような渦に飲みこまれ、家族の将来という人質を取られながらも、様々な重圧の中、自分の行動が正しいかどうか悩み苦しむ姿を演じたラッセルは良かった。
結局、家族を失いはしたが、娘達に自分の行動をテレビで見せる姿には、自分の行動が間違っていないことを娘達に知ってもらいたかったと感じられる。
あまり多くは描かれてはなかったが、教師としての新たな道を見つけ、生きがいを取り戻していった姿も感動的だった。
そしてアルパチーノ演じるジャーナリストの信念は熱い。
ジャーナリストの信念とも言える信頼性と客観性を保つこと…信頼があるからこそ通報者が自分に真実を話すという信念。
一度失われた信頼の代償は大きかったか。
マイクのような偉大なジャーナリストでありながら、自らの保身を考えてしまったという一言が、ジャーナリストの在り方を考える上でとても重くそして大きく感じられた。
他に良かったと思われたのが、タバコ会社側と思われる謀略が実際目に見える形で多くは出てこない点だ。
目に見えない敵、目に見えない暴力、目に見えない力が、ストーリーによりリアル感を与え、何とも言い知れぬ恐怖を見るものにも与え、目に見えないからこその戦うべき相手の大きさを知ることにもなる。
タバコに害があることは誰でも分かっているかもしれないが、内部の科学者が証言し企業がそれを認めることが大事だろう。
日本でも一応「公益通報者保護法」という法律が出来たが果たして機能するかどうかは疑問だな。