21.《ネタバレ》 相撲を愚弄している(いいぞもっとやれ)。
常識とは破壊されるために存在する。
日本の伝統である相撲も、今の世の中気軽に楽しめる「スポーツ」に進化しなけりゃならない。
伝統は大事だ。
古から受け継がれてきた技術、思想。
ただその素晴らしい伝統も、新しい時代のパワーと結びつかなければ何も生みだせない。
それを描いていく作品がこの「シコふんじゃった。」である。
周防監督は「Shall we ダンス?」でも戦後日本の複雑さをダンスを通じて描いたが、「シコふんじゃった。」は純粋な青春映画でもあり、スポーツを通して日本文化へのアンチテーゼも描こうとしたと思う。
どっちもコメディタッチの軽さ、そして一人一人の心の成長を描いた熱いドラマがある。
土着も日本人だからこそ描ける内容だ。
主人公は相撲に興味すらなかった今時の学生。
相撲=単位として受け止めていた。
当然練習も満足にせず大会に出され、ボロ負け。
勝ち負けもどうでもいい、悔しさも無い。
そこに相撲に本気で取り組む人間からの厳しい反発。
「相撲を何だと思ってやがる!!!」
「別にどうも」
「てめえらみたいなオカマ野郎は恥さらしだ!!」
てめえ「ら」。てめえ「ら」と来たもんだ。
自分だけならいざ知らず、仲間や教師まで罵られて黙っていられる主人公では無かった。
「相撲が何だ!勝ちゃいいんだろ勝ちゃ!!見返してやるよバカヤロウ!!!」
悔しさ、憤り、勝ちたいという気持ちの芽生え・・・男たちは徐々に変わっていく。
教師もそんな彼らを見るうちに、錆び付いた魂が蘇る・・・!
心と心の本気のぶつかり合い、経験の差は技術で補え。
幾らなんでもたった数ヶ月で数年以上鍛えてきた奴らと互角に戦えるのか・・・そこは娯楽映画、ご愛嬌といこう。
何しろ主人公たちの面付きが別人だもの。
成長を「面付き」で納得させてしまうこの王道。
単純明快な王道と爽やかな青春。
汗だく筋肉燃焼の相撲をここまで爽やかに、かつ力強く描いた映画は他に無いのかも知れない。
終盤の「試合」の二段構え。
実にドラマティックだ。
シコ、ふんじゃおうかな・・・そんな映画。