1.《ネタバレ》 最初は物語が凡庸な印象でした。王道の冒険譚、行きて帰りし物語。決してモアナから離れない物語に、村の危機にタイムリミットを与えるとか、幼なじみでも設定して村と二元的な描写をした方が幅が出るんじゃない?って思いました。だけど二度目を見て、そうじゃなくてこれはモアナのパーソナルな物語、内宇宙を描いているのだと。マウイすらもモアナの内面を示すためのキャラクター。
シンプルな物語の中に沢山の情報が盛り込まれていて、漫然と見ていると色々と見過ごしてしまう感じです。まあ、沢山盛り込まれたパロディ、オマージュに目が眩んでしまうって面もあるのですが(よく言われている『マッドマックス 怒りのデスロード』『ウォーターワールド』以外にも『レイダース 失われたアーク』とか『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』とか『スターウォーズEP1』とかどっちゃり入ってて)。
モアナはディズニーのヒロインでありながら恋愛的要素皆無、戦うヒロイン。でも、それはそれまで築いたディズニープリンセスの否定、ではないと思うんですよね。ディズニーのヒロインはその時代その時代に合った闘争をしてきている訳で(外への志向や自分の立場からの脱却を示すのはシンデレラからアリエル、ベル、ジャスミン、メグ、ムーラン、ラプンツェル、エルサとアナ、ジュディまで共通したキーワード)、これもまたディズニー伝統の中にある作品だと思います。自分は何者で何を成すべきか、普遍的な自己の確立の物語。
映像はここまで来たか、というレベル。全てが人工なCGで雄大な大自然を美しく描きます。そもそもCGである事を意識させる隙すらありません。海と空のブルーに、カラフルな南洋の花の色を散りばめた世界、その色彩感覚だけでもうっとり。
吹替版、字幕版、そして輸入盤3Dブルーレイと見ましたが、吹替、字幕それぞれに良さがあって、優劣は付け難いです。吹替版のモアナの歌声には強く心動かされましたが、マウイはやはりドウェインのイメージがあっているかな。また、3Dの立体感はそこそこ。いつものディズニーらしい、極端な立体感を見せたりはしない感じ。でも、国内での3D上映が無いのはやっぱり残念です。『アナと雪の女王』であれだけ稼いだ国なのに冷遇されてますね。日本での公開が遅いので公開日の前日にはアメリカのアマゾン経由でブルーレイが手元に届きましたし。もう少し日本のディズニーファンも大切にしてね。
CGの技術は競い合って毎年大幅に更新されているような状態ですが、その競争を芸術作品として心で触れる事ができるのはとても喜ばしい事だと思います。