1.してやられた。
原作を読んでいるから、原作通りなら、面白くなるのは分かってたのですが、それを超えてきちゃったんだよね。映画製作の過程を分かりやすく、面白おかしく見せるのは出来て当然だと思っていたけど、まさか主人公の内面を抉ってさらけ出してくるとは思いもしなかっった。しかもそれが失敗と挫折経験した人には痛く心に突き刺さるので、あたしなんか泣けて泣けて(笑)。そうした仕掛けを上手く演出したのが、原作に無かった部分なんだろうね。この原作に無かった部分を主人公の内面と制作している映画の主人公を上手く重ねて演出したところに重ねて、物語を丁寧に描写している、そしてそれはこの映画に出てくる銀行の頭取の台詞で答え合わせをしてくれている所が、救いになってますね。
役者もある意味面白いと思います。主人公と主人公の撮る映画のヒロイン役がお世辞にも上手くない(正直言って、素人に毛が生えた程度(笑)、これが変な話、役としては良い感じに素人っぽさというか新人監督&新人女優って感じが出てる。それに引き換え、主人公の撮る映画の主人公役が大塚明夫で、ヒロイン付き人になる相手が加隈亜衣なんて、キャリア十分の声優を使っている所に、ある意味悪意まで感じたね(笑)。
決して万人受けするとは思わない作品だけど、それがこの作品の主題にもなっている所も良い点だと思います。映画の中でカット割りについての話が出てくるけど、そんな事を説明しながら、映画そのもののカット割りがかなりうまく出来ているのも注目点でしょう。
折角ここまで出来ていて、ラストのオチまで完全に出来てるのに、惜しむらくはこの映画の上映時間で画竜点睛を欠いてるんだよね。これがもったいなかった。
勿論、この映画自体が完全なるフィクションになっているから、現実と合わせる必要は無いのかもしれない。でも折角この映画の完成度がここまで高くなっているのであれば、やっぱりこうした細かい所で洒落てないとこの映画の醍醐味が薄れる気がします。