1.《ネタバレ》 ネットフリックスのロアルド・ダール×ウェス・アンダーソン短編4部作のうちでは1作目にして最長の尺。他の三作以上に工夫が凝らされていますね。流石4部作のトップバッターに選ばれただけはあり、どの作品も魅力的ですが本作が最も技巧を凝らされた創りとなっていて、個人的には一番のお薦め作品です。
レイフ・ファインズ演じるところのロアルド・ダールが語り、語りの中のヘンリー・シュガーが語る。更にその中で物語の中心に誘う医師が語り、ついには話題の中心人物である修行の結果透視能力を得た人物が語る。この入れ子構造が観ている者を作品世界に大いに惹き込みます。
全編通じての登場人物の徹底したカメラ目線と語り掛け、そしてコミカルな動き。デフォルメしつつもリアルなテイストのセットはさながら絵本、いや巨大で贅沢な紙芝居の世界。空中浮遊の際の台座なんて思わず笑ってしまいました。兎に角どこを取ってもアーティスティックです。
対して、物語そのものは真っ直ぐで一本筋が通ったもの。要領良く、さして苦労もせずに身に付けた透視能力。それによって楽々稼げる資産。でも、それでは真の満足は得られない。結果主人公は人のために生きることの喜びを見出す。人生訓的物語を訥々と語り聴かせてくれます。
多少は観る者を選ぶ作品かも知れませんが、疲れ切った一日の終わりにサクっと鑑賞するのには最適な1本でした。