1.《ネタバレ》 軟骨肉腫という難病に冒され、21歳で散った女性ミコと彼女を支えた恋人マコの悲恋の物語。二人は病院で出逢い、淡い恋心を抱き合い、二年間文通が続いた。病気が悪化したミコがマコに別れに手紙を出したのは、相手を思い遣ってのことであり、それを読んで激怒したマコが上京して真意をただしたのは純粋であればこそだ。この一件があって、二人の絆は深まった。しかし若き生命を燃やして愛し合う二人を病気が無残にも引き裂いていく。やる瀬なくも暗鬱たる内容だが、何と言っても特筆すべきは病魔の恐ろしさで、 怖じ気がひしひしと胸に迫り、気鬱になった。肉腫が眼球と鼻骨の間に出来、何度か手術を受けるが肉腫の浸潤は止まず、それが頭蓋骨の底部に広がらないように、左眼と左頬骨、上顎の左半分を摘出する外科手術が必要になる。これは左の顔のほぼを半分を失うことを意味する。手術が成功しても、2年生存率3割程度、5年生存率ゼロに近いという厳しさだ。女性が顔半分を失うのはどんなに辛いことだろうか。想像を絶する。自分の身に起ったと考えるだけでぞっとする。この激烈たる悲劇性が、万人の心を打つ要因となっているのは皮肉なことだ。彼女が自殺を考えたのも無理からぬことだ。恋人の前では美しく居たいという気持ちは痛いほど分かる。いっそ一緒に死んでくれたらと、思いつめる気持ちも理解できる。しかしマコは自殺を断固否定し、ミコに最後まで病気と戦うように諄諄と説得する。情に流されない立派な態度だ。これで二人の絆の強さは決定的となった。だから彼女は死を受け入れることができた。死を覚悟し、身の回りの整理をする為に人形を燃やすときの静穏な顔は神々しい。。観葉植物を老患者に譲る心根の優しさにも感じ入る。彼女は、この世に恨みや未練を残して死に赴いたのではない。十分に生き、愛し愛されたという充足感に抱かれながら永眠したと思う。力を尽くした生き方が胸を打つのだ。老患者の「わしが変わって死にたかった」という絶叫は本心だろう。乙女の死は悲痛だ。主演女優の熱演は認めるが、関西弁はなっていなかった。ミコを脅して、化け物扱いした女優の演技が光っていた。憎まれ役は必要だ。原作を読んで映画化を熱望したという吉永小百合。彼女が映画撮影の合間を縫ってミコの実家を訪れると、両親と妹の歓待を受け、請われてミコの着物を着て、丸一日彼女の代りをして過ごしたという逸話が残されている。