31.ジョゼの祖母が死んだと聞かされたとき、私も恒夫同様跳んでいっただろうと思う。今でさえ誰かが車いす(買えないので乳母車)に乗せてくれなければ外出できないのに、側に誰もいないとなるとどんなに不自由だろう。(乳もみゴミ出しは妙にリアル)しかしジョゼは平然、元々海の底にいる者はそこにとどまる限り何の不自由もないのかもしれない。タイトルは何これという奇抜なものだったけど、中身はとても純粋でリアルで切ないものだった。これだけ強く印象に残った映画は他にはあまりない。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 9点(2014-07-19 21:30:29) |
30.《ネタバレ》 足が不自由なジョゼは一人で歩くことすらままならない。けれど映画はジョゼをいわゆる身体障害者としては描かない。恒夫をはじめとした登場人物たちも彼女を特別視するようなことはなく、同情も美化もなく描かれる彼女は、単なる変わり者でわがままな一個の人間として、当たり前に存在する。そこがいい。乳母車に乗ったジョゼの頬を平手で打つ恋敵の少女は、敢えて乳母車の前に顔を差し出し公平にその頬を打ち返させる。恋を前にした彼女たちはあくまで対等だ。そんな中、ジョゼの祖母だけがジョゼを「特別」に扱い、彼女を「こわれもの」として部屋に閉じ込める。囚われて生きるジョゼが世界にふれられるのは、祖母の曳く乳母車に乗せられ散歩するわずかな時間だけだ。その乳母車が祖母の手をうっかりはなれたことによりジョゼと恒夫が出会う序盤は、おとぎ話の始まりに実にふさわしい。まだ見ぬ世界を恒夫と共に進むジョゼ。恋人の心強さを盾に獰猛な虎を見ることは、愛する人といっしょになら世界に潜む不安を乗り越えられるということだ。それは閉じ込められた部屋の中で日々、彼女が切実に思い描いた夢であったかもしれない。彼女のそんな幼い願いを一つ一つ叶えてくれる王子さまが、けれどやがて直面し思い知るのは、お姫さまをお城に閉じ込め続けた悪い魔女の手が、か弱いこのお姫様をいかに盤石に守り支えていたかということだ。そのことの困難さ、その重み。彼女を守り抜くには王子さまはあまりに弱く、弱い彼に夢中でしがみつくお姫さまはあまりに幼い。そしておとぎ話は終わる。祖母の手も、ついには恒夫の背中も失ったジョゼ。それでも彼女に一人生きる力を与えるのは、全身全霊で彼を愛した記憶だろう。恒夫の抑えきれぬ嗚咽もまた、どうしようもなく失った彼女の存在のその計り知れない大きさを止めどなく物語る。守ることも守られることも失った彼らはようやく対等だ。共に弱く、そして強い。冒頭のモノローグ、恒夫の声は穏やかで、ほほえんでいるようにやさしい。あるいは台所の床に尻もちで着地するジョゼ。ズシンと響く音。ぶかっこうでいとおしいその音は、彼女が日々を生きる音だ。二人は虎も魚も住むこの世界を勇敢に、今度はそれぞれに、進んで行く。一生忘れることのないおとぎ話を、かけがえのないその血肉として。 【BOWWOW】さん [映画館(邦画)] 9点(2009-10-31 23:50:13) (良:1票) |
29.きたないものや、目を背けたくなるものを、隠すわけでもなく、美化するでもなく、そのまんま描いている作品。すごく日本的なのだけれど、ヨーロッパ発のミニシアター系にあるような雰囲気を帯びていて、素晴らしい作品だと思う。こういった映画が日本で作られたことはすごいなと思うし、池脇千鶴も妻夫木聡も、自然な演技でちゃんと上手で、ああいい俳優だなと思う。 【ともとも】さん [DVD(邦画)] 9点(2009-04-05 20:35:49) (良:1票) |
28.《ネタバレ》 この映画をどう観るかはその人が今までどんな恋愛をしてきたかによってかなり異なると思う。私にとって、この映画は非常に「哀しい」映画だった。そして、同時に「正しく」生きていこうと決意するきっかけになった。 まず、筋はありえなさそうでありえそうな、日常の中の非日常といった感じ。若者向けのメルヘンとしては良いところを衝いている。その後の展開も特におかしな点は無かった。 キャストの面から見ると、妻夫木も池脇もとても良い演技をしていたと思う。妻夫木はイケメンだが普通の大学生を、池脇はエキセントリックな中にも可愛げのある女の子を好演していた。板尾の自然な演技も光る。関西弁はよく分からないが、上野が不自然で池脇のが可愛いと思った。博多弁はちょっといただけない部分もあるが、まあまあ合格点か。 さて、何が「哀し」かったかだが、やはりラスト付近の妻夫木の嗚咽だろう。「守る」と決めた人間を守れなかった口惜しさ、彼女に対する罪悪感、自分に対する慰めなどの全てが詰まった涙だったのではないか。彼を責めることは容易い。しかし、私にはそれはできなかった。自分も他人を捨てたことがあるから。別れの予感があるにもかかわらず一度は受け入れ、そして切り離すのはあまりにも残酷な行為ではないか?彼も私も残酷だったということだ。池脇が「帰れと言われて帰る奴は帰れ!」と妻夫木を詰りながら、背中に縋って泣くシーンがあるが、私は心の中でずっと「帰れ!帰れ!」と叫び続けていた。映画として成り立たなくなるけど。「帰れ」と言われて、いったん帰ろうとする人間には相手を救うことなど結局は出来はしない。そもそも「救う」という考え方が心の中に入り込んでいる時点で非常にその恋愛は難しくなる(と思う)。それが出来る人を私は尊敬する。私も含め大部分の人間はそれが出来ないのだからそういう恋愛をする権利は無い。だが、1回目は分からない。私のように傲慢な人間は本気で救えると勘違いする。しかし絶対に繰り返してはならない。ちょっと長いけどこう思った。 映画に戻るが、ラストの料理のシーンは救いだ。だが、病んだ私には彼女の神々しい背中は彼岸のもののように映った。 【枕流】さん [DVD(邦画)] 9点(2009-03-26 22:29:44) (良:2票) |
27.主人公がジョゼのどこに惹かれ、なぜ別れたのか、という部分にとても共感できました 【アンドレ・タカシ】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-09-06 23:34:26) |
26.《ネタバレ》 障害者=いい人の根本を打ち砕いてくれた作品。あの終わり方はものすごいリアルだった。ジョゼは恒夫を失ったけど、「外の世界」を手に入れた。最後のジョゼのダイブと一人でも颯爽と買い物に行く姿は見ててすがすがしかった。 物事に100%はないんだろうな。 恒夫の最後の号泣には胸が痛くなった。あれはどのような涙だったのだろう?想像しかできないのがちょっと悔しい。 関係ないけどツマブキ君、普通のどこにでもいる調子のいいダメ男の役うまいよね。ヘタレ役がすごいよね、ツマブキ君。またあんな役してほしいな。 それと、上野樹里はこの頃から演技うまいですな。 【Shiori】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-05-26 22:03:38) (良:1票) |
25.《ネタバレ》 大人なら誰でも一度は通る恋愛の試練を描いた映画だと思いました。恋は理想と現実がうまくあわなくなって、どうしようもなくなると主人公のように人は絶望で泣くのです。で、泣いても神様は助けてくれないから人は成長して大人になるのだ。と、見ていて勝手にそんなことを思いました。 【よねぴー】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-05-05 17:10:46) |
24.《ネタバレ》 ジョゼのキャラクターが強烈ですね。5年、10年と一緒にいると考えるとつらそうです。 でも最後はジョゼがかわいそうな感じでした。 【紫電】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-01-18 16:25:05) |
23.《ネタバレ》 小洒落たタイトル、妻夫木くんが主演、池脇千鶴のヌードの話題先行など、個人的に食指が動かない作品でした。(すいません。嘘です。最後のセンテンスには興味津々です。)でも観てみるとコレが自分のツボ。もう大好き。ほんとに好き。妻夫木を初めて上手いと思いましたし、池脇も魅力的でした。ばあちゃん、板尾、「いてまうど」の兄ちゃん、荒川良々等の濃いキャラも旨味を発揮していました。重いテーマですが、物語と向き合わせる手法に長けていたと思います。死別や結婚という安易な結末に逃げなかったのも好印象。とくにジョゼの気持ちが心に沁みます。動物園で虎の見学。恐怖に対峙したときに、自分を守ってくれる人がいること。これほど心安らかなことはありません。でもこの幸せが長く続かないことも彼女は承知しています。いずれ彼は去っていく。だから車椅子を買おうとしなかった。少しでも長く彼の背中に触れていたいから。乳母車を新調しなかったのも、押してくれる人がいなくなるのを知っていたから。彼女が妻夫木に言う「私をおぶえ」という台詞。それは遠まわしなプロポーズでもあったと思います。頭では彼との別れを予期していたとしても、幸せな結婚生活を夢見ないはずがありません。しかし彼女の願いは叶わなかった。その直後のシーンもたまらない。トイレに入ったジョゼを覗く妻夫木。彼女は「あっち向いてて」と言います。「出て行って」ではなく。その想いに胸がつまります。水族館で見られなかったお魚たちをラブホテルの映写装置で見る彼女。自由に泳ぐ魚たちの中で、至福の時を過ごすジョゼ。貝殻ベットの中の彼女は、まるで人魚姫。幸せを知ってしまった彼女は、もう海の底へは戻れないと言います。彼と過ごした日々を受け止めようとする彼女。切ないほどに強い。いや、強くあろうとする姿に心打たれます。それに比べると男のほうは情けない。でも彼を責める気にはなれません。彼が怖気づいたのも分かる。彼は彼が思う幸せを求めて生きていくでしょう。でも心の傷はずっと残るはずです。それも仕方がない。悲しいこと、苦しいこと、切ないこと。人生には嫌なことの方が多いかもしれない。でもそれを知らずして、幸せを知ることもありません。ラストは料理をするジョゼの姿。食べることは生きること。海の底とは違う世界を、喜びも悲しみもある世界を、彼女はこれから生きていく。ジョゼは死を選ばなかった人魚姫です。 【目隠シスト】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2007-06-18 18:02:04) (良:9票) |
22.《ネタバレ》 池脇千鶴の演技があって成り立つ映画。ネイティブな関西弁は去ることながら、あの年齢で陰の演技ができるところがすごい。ストーリー自身も、女性の強さ、弱さを淡々と、しかし鮮明に描いていて、芯の通った映画だった。”帰れ、帰れって言われて帰るような奴は帰れ!!” |
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21.『妻夫木の映画は糞映画』 これは僕が信じて疑わないありがたい格言だったんですけど、 まんまと格言が覆されることとなりました。 この作品は久し振りにガツンと来る良質な恋愛映画でした。 冒頭、朝食のシーンでの玉子焼きがほんとに美味しそうで、 庶民派の僕としては、これだけで充分に満足な感じだったのだけど、 ここに池脇千鶴が被せてきた台詞が圧巻だった。 『サルモネラや』 この時点で僕の格言が音を立てて崩れていくのを感じた。 後はもう名台詞のオンパレードで、 このセンスはどこからやってくるんだろうと脱帽するしかなかった。 しかも、これに対抗する上野樹里がまたいい女で、 顔と体で池脇千鶴を圧倒しているのは一目瞭然だが、 若いのに福祉に興味があるなんて性格美人の側面を併せ持つ完璧超人と来たもんだ。 これはもう勝ち目が無いはずなんだけど、そこは映画の魔法である。 見事に勝者と敗者の入れ替わるファンタジー。 現実には絶対にあり得ないけど、 もしかしたらあるかも知れないと思わせるペテンの巧さ。 ここまでやったら最後まで妄想物語を貫いて欲しかったけど、 最後には現実に突き落とす残酷さがまた良かった。 それでも、涙脆いこの僕が泣かなかったのは、 何か希望のようなものを感じるラストだったからかも知れない。 【もとや】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-02-02 12:46:06) (良:1票) |
20.とにかく池脇の好演が印象的で、「男とは」、「女とは」を考えさせられる名作。しばらく頭にこびりつきます。 【フロッグマン】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2006-05-02 09:23:22) |
19.邦画は何だか嫌いなんですけどこの作品は好きです!!素朴な感じの映像と大阪弁、どんどん映画に引き込まれていくって感じであっと言う間に終わってしまいました。 典型的なラブストーリーとは違って好きです♪ 【愛しのエリザ】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-08-31 23:05:46) |
18.あのお魚のラブホテルはすごい!行ってみたい。 それはともかくとして、あえて2人のセックスシーンに時間を割いたのは、恒夫は「障害者の女性」を愛したのではなくて、「女」を愛したということを伝えるためだったと思います。 恒夫は同情で障害者のジョゼを好きになったわけではなく、つまり多くの男性が「ふつうの女性」を好きになるのと同じように恒夫も、ジョゼという女性の体と心を求めていた。 とても自然なことで、すんなりと、この特殊な恋愛に入り込むことができるようになっています。 そしてジョゼの偉いところは、歩けないという事実を素直に受け入れていることだと思います。けっして愚痴を言ったり健常者に嫉妬したりしません。 それに比べ健常者の私たちは、「自分が持っていないもの」を持っている人を見ると嫉妬したり不満を感じたりします。自分よりも出世している人間や、お金を持っている人間、または自分よりも愛されている人たちをみて、「ああ、自分は何も持っていない。なんて不幸なんだ。羨ましい」と嘆いたりすることもあるのでは? ジョゼは生意気な女性ですが、あるがままの自分を受け入れて生きている。とても尊敬できる女性。 「障害者なのに、男に捨てられた」と思うのは、ある意味で健常者の驕りなのではないでしょうか。 彼女をみて「自分が持っていないもの」を悲観せずに「いま自分が持っているものだけ」を素直に喜べる姿勢に強く共感しました。 【花守湖】さん 9点(2005-03-05 01:31:48) (良:2票) |
17.極めてリアル、だからこそ切ない。正直な演出。田辺聖子のごく短い原作小説をふくらませて、これだけの鋭く鮮烈な物語に仕上げた脚本の渡辺あやも見事。 【NIN】さん 9点(2004-12-13 15:40:03) (良:1票) |
16.《ネタバレ》 観賞後、随分長いこと余韻を残してくれた作品です。「帰れと言われて帰るようなやつは帰れ」の台詞がとっても印象的で、素直な感情を表現できないジョゼの切なさが痛いほど伝わってきて、胸がキュッと締め付けられたような気持ちになりました。最後、二人が結ばれないのは残念な結末かもしれないけれど、例えこのような状況下でなくとも別れは誰にでも訪れるもの。恒夫にとってもジョゼにとっても、決して無駄じゃない出会いであったことが最後の方のシーンから窺えるので、切ないながら後味悪くないラストだったと思います。恒夫がジョゼに惹かれていく過程に関しては若干説明不足気味かな?とも感じましたが、「男をおとすには胃袋からだぞ!」と口癖のように言っていたわが父の台詞を思い出し、そんなものかな?と思いました(^^;)。 【ぷっきぃ】さん 9点(2004-11-23 13:13:22) (良:1票) |
15.せつなくていい映画だった。ジョゼをおんぶするシーンに深い意味があると思う 【のりまき】さん 9点(2004-11-21 15:24:58) |
14.《ネタバレ》 結局「現実的」だった主人公が、「純情」なジョゼから離れざるをえなかったのは、仕方がなかったこと。でも、それを自分から決めたのに、心では割り切れなくて。それが、クライマックスで主人公が号泣するというカタチになったのだと思います。どうしようもないことだけど、どうしようもなく、せつない。だから、心に響くのだと思います。 【IKEKO】さん 9点(2004-11-14 21:21:20) |
13.《ネタバレ》 見終わった後に何とも言えない切なさが残るけど、不思議と後味は悪くない。ラスト、電動車いすで風を切って街を行くジョゼの顔をカメラは映さないが、涙を流してはいないのだ。静かに鮭を焼くジョゼの顔はそれまでの童女のような幼さがウソのようになくなった大人の女性の美しさ。恒夫は残酷にジョゼを捨てたが、映画では描かれていないけれど、それは「障害の壁」とかいったステレオタイプな理由ではないのだろう。ただ、「もっと好きな女ができた」だけなのだ。だって、ジョゼを好きになる時も恒夫には彼女の障害に対するためらいなどはなかったのだから。ジョゼと恒夫の間に起きたのは、若い男女の間によくある出会いと別れのエピソードのひとつ。だけど、それでジョゼは人目を気にせずにたくましく生きる強さを、恒夫は人の弱さを思いやる優しさを知った。不器用でも、結果が残酷でも恋愛は人をかようにも変えることができる。単純に設定だけを見ればちょっと前に大ヒットしたフジテレビのドラマに似てるけど、こちらは見て良かったな、と素直に思いました。 【しまうま】さん 9点(2004-10-01 13:21:20) (良:1票) |
12.《ネタバレ》 邦画・恋愛物・アンハッピーエンド・・・私の苦手なキーワードが目白押しのこの作品。 ある映画好きの方から、「騙されたと思って・・・」と勧められ、 DVDをレンタルして見ました。 見事「騙されました」・・・もちろん良い方に! すっかりジョゼの虜になってしまい、原作も読みましたが、 原作より遥かに良かった! 映画館へ行かなかったのが悔やまれます! 【MARTAN】さん 9点(2004-10-01 07:57:37) |