1.軽く酒に酔った雛祭りの深夜、ふらりと立ち寄った映画館で、“色”と“艶”に包まれる。
圧倒的な“感覚”に元々の“酔い”は益々広がり、吸い込まれていった。
遊郭の女たちのパワーとモロさ、そしてどうしようもない切なさが、極彩色の映像美の中でめくるめく。
もちろんそこは、華やかさの反面くるおしいほどに「不条理」だが、何かそれ以上に本質的な“美しさ”を感じた。
どうやったって“生き抜く”ということの美しさ、想いを通すことの美しさ、女の根本にある絶対的な美しさ、そういうあらゆる「美」がビジュアルのそれ以上に伝わってきた。
映画初監督となった写真家・蜷川実花の“創造性”は「本物」だ。すでに「完成」されている安野モヨコの原作を、映像作品としてさらに「完成」させてみせたチカラに文句のつけようはない。
さらにそこに、音楽の椎名林檎、主演の土屋アンナが加わり、交わり、今や“ジャパニーズ・ガールパワー”の先頭をぐいぐいと走る才能による物凄い映画が誕生したのだと思う。
雛祭り。まさに“女の祭り”、その夜にこれほどふさわしい映画はなかっただろう。