1.《ネタバレ》 原作やオリジナルを知らずに、本作を単独で評価すれば、5点か6点かという評価になるだろうか。松本清張原作作品なので、ストーリー自体の面白さは保証されている。
しかし、オリジナルを見てしまうと、本作は“酷い”としか形容のしようがない。途中退席をしようかと考えるほど、“憤り”を覚えたので、正確にジャッジできているとは思えないが、カラクリを全て知ってみると、ネタの出し方、編集や構成、脚色全てにおいてバランスが悪く、ことごとく裏目に出ていると感じられる。観客に“驚き”を与える気持ちが感じられず、ストーリーを単に流しているだけ。自分の頭に血がのぼっていたので、女優陣のせっかくの熱演も『茶番だ』としか感じられなかった。
現代において、当時の北陸を再現することは難しいが、冬の北陸を上手く表現して活かしているとも思えない。
こういうことになるのは分かっていたので、オリジナルを見るのは本作鑑賞後にする予定だったが、偶然オリジナルを見る機会が先に来てしまったのが問題だった。
松本清張の原作を読んでいないので、自分の批判が適切なものかは分からない。
ひょっとするとオリジナルが原作とかけ離れており、本作が原作に沿っているのかもしれないが、オリジナルの良さをことごとく消し去ってくれている。
オリジナルはただの殺人事件を描いたわけではないのに対して、本作はただの殺人事件を描いたに過ぎない。
オリジナルは“時代”や“過去”に翻弄された同情すべき悲しい事件なのに対して、本作は同情の余地が一切ない、自分勝手な人たちが巻き起こした事件となっている。
監督・脚本を兼ねている犬童監督はオリジナル作品をきちんと見たのだろうか。
もしオリジナルを見ているとすれば、彼の才能を高くは評価できない。
しかし、逆に穴が空くほどにオリジナルを見たのかもしれないとも感じられた。
オリジナルとは180度と言っていいほど、完全に真逆の作品に仕上がっているからだ。
単にコピーして劣化版を作成するのではなくて、自分の“オリジナル”作品を仕上げるという壮大な狙いを込めたのだろうか。その壮大な狙いが失敗しただけなのかもしれない。リメイク自体は否定するつもりはなく、自分としては歓迎をしているが、比べられる対象があるだけに、製作するサイドとしても、鑑賞するサイドとしてもリメイクというものは本当に難しいものだと感じさせた。