2.《ネタバレ》 この映画に出てくる人物は全て過去に家庭において不幸を背負っている。
そして他にもいじめであったり、病気であったりと登場人物を取り巻く不幸は絶えることがない。
しかし、逃げずに戦うという力技で過去の関係は精算され、対人関係は好転する。
家族を取り巻く都合の良すぎる不幸と都合の良すぎる善意。
いじめの加害者、双葉の母親、鮎子の母親という家族以外の人物は悪意の塊となり、家族の結びつきを強めるバックグラウンドとしてしか描かれない。
店内で、いきなり客が店員にビンタをしたら、食事中の他の客はどう思うだろう。夜病院の外で大声で楽しそうに叫んでいる人がいたら、今息を引き取ろうとしている他の患者の家族はどう思うのか。
あの葬式に対して近所の人は、今後銭湯を利用する人はどう思うのか。
拓海、君江、探偵とその娘も含めた広い意味での家族以外は、悪意で塗り固められ、ただの背景になってしまう世界。家族以外の他人に対する思いやり、想像力が欠けた世界。それらが、何の後ろめたさもなく”良き事”とされてしまう自体。
その内向きで閉じられた世界観が、ひたすら気持ち悪かった。