1.《ネタバレ》 二十年くらい前であれば、驚きをもって評価できたかもしれないが、今更こんな小ネタをもって、「信じがたい事件」として紹介されてもインパクトが弱すぎる。服従の心理ネタでは、ミルグラム実験が有名。「人は権威に命令されると、倫理とは関係なく服従してしまう傾向がある」というような事を証明した実験だ。そのテーマの映画なら、「es」という傑作も有名である。
この前知識がある人にとっては、この映画は全く刺激がない。
しかし、前知識がない人にとっては、もっと納得いかない部分が大きいのではなかろうか。電話で高圧的に命令してくる警察官の身元を確認もせずに、服従をするだろうか?
田舎町では、当たり前のように悪徳警察官が我が物で振るまい、自分の気に入らない弱い人間は刑務所にぶち込むというのような事が日常的に行われていたのかもしれない(だとすれば、そういう描写が序盤にほしい)。
本作においては、服従の心理以前に、服従者の教養に問題があっただけにしか見えない。
その証拠に、一人まともな人間が介入しただけであっさりと事件は解決する。
事件自体が、ネタとして弱いのだから、それこそ「服従の心理」と「責任能力」をテーマに訴訟の話を広げていけば、興味深い内容になったのに…。