4.《ネタバレ》 微笑みの国タイの闇で巣食う児童買春と臓器売買。売春でエイズをうつされ衰弱した子供は、ゴミと一緒に捨てられる。臓器を移植するために脳死でもない生きた子供を使う。人間としてではなく物としての扱いに、子供たちは抗う術もない。闇の組織、新聞記者、NPOボランティア、臓器移植を切望する親、それぞれの事情と思惑が絡まって、どんどんストーリーに引き込まれていく。
ところが、終盤に思わぬ大迷走。犯罪者グループが何の勝算もない銃撃戦をやるなんて、まったく理解不能。ああいう犯罪者は、もっと計算高くて冷徹なものなのに。あれじゃまるで考え足らずのサイコ野郎。
ラストの小児性愛者のオチも、狙いすぎていてガッカリ。衝撃的にすればいいってもんでもない。だいたい買春するような小児性愛者が、発覚もしていない段階で罪の意識に苛まれて自殺なんて聞いたことがない。性癖なんだから、捕まっても再犯率のとても高い、根深くて図太いものなのに。小児性愛者の被害にあった児童が、自分を汚されたものだと思い込み、自殺に至るというならありえる話だけれど。
せっかくの社会派の作品を、取ってつけたようなサスペンス的ネタバラシで台無しにしている。そこまでも、おかしなところはあった。まだ生きている子供をゴミ袋に入れて捨てたり、冷静に考えるとありえないような杜撰な点も、よくある「話を盛る」表現として好意的に解釈し目を瞑ってきたが、もうダメ。この唐突で的外れな終盤のおかげで、ドキュメンタリーにもできそうな題材が、完全に嘘っぱちになってしまった。いくらフィクションでも、社会問題的なテーマを扱うなら、もっと本当らしく見せてくれないと。