2.《ネタバレ》 住人が減って高齢化の進んだ団地という設定は、右上がりの時代が終わって少子高齢化と人口減少が進行する現代にふさわしいと思えなくもないが、実際それがあまり生かされていないようなのは面白くない。
例えば問題の事件が起きたのがこの団地の最盛期だったとすれば、団地そのものの衰退と、そこにいつまでも一人で残る少年の孤独が重なる形になっただろうが、実際は13年前(西暦2000年頃?)とのことでそういう取り方はできず、単に主人公が孤立しがちな舞台を用意しただけに終わっている。または「仄暗い水の底から」(2001)の舞台設定を再利用しただけに思えなくもない(エレベータはないが)。また主人公が介護の学校に通っていたのも、高齢化の時代の表現というより隣室の老人を発見するきっかけだけで、ストーリー展開上の都合でしかないように見える。そういった設定と主人公の負った心の傷にも直接関係がないようで、全体として散漫な構成になった印象がある。
ところで普通一般のホラー映画でよくあるように、登場人物が自分からわざわざ危険に近づいていくという制作側に都合のよい(観客にとっては苛立たしい)展開に、この映画ではまともに理由づけして開き直ったように見える。祈祷師は「優しい」という言い方だったが、それよりも感情面で割り切りのできない性格ということだろうし、また自分で言っていたように怖いものから目を逸らせなくなり、逆にまじまじと見つめてしまうタイプだったのではないか。それでは今回のような受難も仕方ない気がするわけだが、これも「仄暗い…」の虚弱な主人公のイメージを流用したように思えなくもない。劇中では、すぐに部屋を出ろと言われたのに待っているかのようにまだ部屋にいて、予定通り入れてしまったあたりでこれはもう見捨てるしかないと思われて、あとは応援しないから勝手に破滅してしまえという投げやりな気分だった。
なお主演女優に関しては、個人的に愛着はないので特に感想もないが、ここを見ると皆さん好意的なようでもあり、どうか今後とも頑張っていただきたいと一応書いておく。