1.《ネタバレ》 情に厚い用心棒が、女に暴力を振るう極悪マフィアと全面戦争!かと思いきや、ギャンブル依存性のステイサムが、「人生って何じゃろねぇ」とか言いながらラスベガスを彷徨う珍妙な映画でした。マフィアとのトラブルは意外とアッサリ片付くし、ラストでは、数日行動を共にして仲良くなった優しいIT成金から50万ドルをポンともらって(お前は猪瀬元知事か)人生のやり直しをさせてもらうという超ご都合主義。アクション映画としてもドラマ作品としてもこれといった見所がなく、見て損したと思うレベルの作品でした。
気の良い悪人役のステイサムはいつもながらのハマり具合であり、抜群の安定感で作品の基礎となっていますが、本作についてはステイサムが演じるからこその不満点もありました。いつものステイサムなら大暴れして敵をなぎ倒し、観客に溜飲を下げさせる場面であっても、本作では実力行使にためらいがあって、見ている側からすると何ともスッキリとしないのです。この辺りの欠点は、監督が作品のカラーを決め兼ねたことが原因ではないかと思います。例えば『ハミング・バード』も本作と同傾向の作品でしたが、そちらはドラマ畑のスティーブン・ナイト監督の色がはっきりと出ており、「これはアクションを見るための映画ではありません」という共通認識が作り手と観客との間で自然と出来上がったおかげで物足りなさは感じませんでした。他方、本作の監督はサイモン・ウエスト。よほど気が合うのか『メカニック』『エクスペンダブルズ2』に続きステイサムとは三度目のタッグとなりますが、そのフィルモグラフィを見ればわかる通り、アクション映画しか撮れない監督です。裏街道の人間模様を描くことには不慣れだったし、たまに出てくる殴り合いも血生臭いバイオレンスではなく、ステイサムの身のこなしをカッコよく見せるための華麗なアクションとして撮られているため、ドラマの方向性と見せ場の印象がバラバラになっているのです。ラストの大立ち回りなんか最悪で、主人公があれだけ強いのなら最初から暴れてればよかったのにと、余計にモヤモヤが残る結果にしかなりませんでした。
唯一面白かったのは冒頭。ハゲのステイサムが他人のヅラをむしり取り、ハゲ頭を笑いものにするという倒錯したやりとりのみ楽しめました。