1.《ネタバレ》 純文学的、と言いますか、こういう常人では理解しにくい感覚を持つ人間を扱うお話というのは、私は純文学だなあと思ってしまいます。そして私はそういうのが苦手ということでありまして。。。
まず嫌で嫌でたまらない風俗の仕事をしなくてはならないほど経済的に恵まれていないにも関わらず慰謝料を受け取らないということがよくわからない。そこで挙げられる理由は「相手からの謝罪がなかったから」とごもっともな理由ではあるのだが、件の弁護士先生もおっしゃっていたように、保険会社から出る保険金を受け取る受け取らないに対して張るような意地なのであろうか。多くの人が言うように、それを頑なにもらわない意地がよくわからない。はじまりがそこなので、あとの展開もそれを引きずってずっと理解が難しくなってしまいます。おそらく作中の周りの人間にとってもそうなのでしょう。ひたすら己のルールのみに従って生きるこの田中良子という人物は、良い言い方をすれば信念に生きる高潔な女性なのかもしれない。ですが周囲の理解は得られず、周囲の理解を得られないままに他者と関わるこの女性は、やはり社会からは除外されてしまう。
そんなふうに「ルール」というものや己の信念に厳しい女性なのかと思いきや、亡くなった旦那にごめんねとつぶやき、新たな男性と関係を持とうとしてしまう。あれのせいで結局この女性がどっちに振れたいのかわからなくなった。亡くなった旦那のことを愛し、操を捧げて、妻となってしまったからここまで意地を張ってきたのではないのか。それがいとも簡単に崩されてしまったことでこの女性への不信感が一層高まってしまった。男性とそういう関係になること自体がどうとは思いませんが、ここまで亡くなった旦那を理由に行動しておいて、え、それ?ってのは正直な感想です。
そういえば、これを観た日の空はちょうどこの映画のラストのような茜色の空だったことを覚えています。たまたま偶然ですが、なにか縁を感じた瞬間でした。