12.《ネタバレ》 そもそもこの作品は、映画作品として面白いのでしょうか。
ドラマとして見ると、リアリティに乏しく深みが足りません。
SFエンタメとして見ると、遊び心が少なく、抑揚が足りません。
何ともつかみどころがない作品です。
本当に良い映画は、たとえ娯楽性が薄くても、話にひきこまれて、『映画・作品としての面白さ』を感じます。この作品にはそこまでの圧力がありません。
決定打に欠ける作品です。映画としての『ウリ』がないです。斬新なアイデアのみで勝負している印象です。
内容について少し述べます。
世界の構図が見えづらいです。また、ヴィンセントの目的はわかります。ですが、その動機、彼を動かす原動力が伝わってきません。何故そこまで『宇宙へ行くこと』に固執するのか。その説得力があれば、より感情移入することもできて、まったく違った印象になったことでしょう。まるで、『映画のために宇宙へ行こうと躍起になっている青年』のようです。ついでに言うと、アイリーンの立ち位置、彼女とのラブストーリーの必要性も不明です。それにジェロームは何のためにサンプルを提供するのか、彼の目的・動機が一番わかりにくいです。
細かいところで言うなら、遠泳でやたらと優劣をつけたがるのも近未来SFの設定に合っていない気がします。
そもそも娯楽SFサスペンスを見るつもりでいたのが間違いですね。サスペンスと思ってみると失敗します。確かにサスペンスの側面もあるのですが、あくまで味付け程度。多くの人が述べられているように、これはヒューマンドラマであり自己啓発ドラマです。
もっとマクロな世界観を期待していたのに、意外とミクロな世界でのやりとりに終始してしまったのも残念です。良い映画なんでしょうが、どうしても面白くなかったので、ここは正直に『つまらなかった。』と言っておきます。