2.本作でもやっぱりオープニングは重厚感があって素晴らしかった。
溝口後期の作品は、オープニングだけでも楽しめる。
しかし内容は評判通り、あんまりよろしいものではなかった。
明らかに溝口が苦手なジャンルに手を出したというか、そもそも、日本人オールキャストによる日本語の楊貴妃物語なんて、設定に無理がありすぎる。
そんな無理な設定で、よく完璧主義の溝口が最後まで匙を投げず撮りきったものだと感心してしまうほどだ。
おそらく部屋のセットとか調度品を見せたいがためであろう引いたショットが続き、名優、森雅之の演技すらも堪能できない結果となっている。
ただし、全てがダメかと言ったら、そうでもなくて、溝口作品ならではの奥深さと気品が画面全体に広がっていた。
そして、京マチ子じゃなく、当初の配役であった入江たか子の楊貴妃で観てみたかったという思いが沸々と湧いてきた。