1.《ネタバレ》 いよいよ若大将を加山雄三から大矢茂に譲る、とした作品。ついでに(?)青大将も石山新次郎から後輩に譲られた……はずなのですが、新次郎はほとんど主役級の露出度。製作側が大矢茂に不安を感じ、かといって加山雄三を前面に出せないものだから、田中邦衛におんぶにだっこしたのは明白です。しかし青大将の幼稚な言動をほぼ全編にわたって見せられては、さすがに辟易します。やはり相手になる若大将がいてこそのことで、青大将1人では笑いを取るどころか嫌味なだけ。おまけに終盤、太田に対して説教を垂れるという支離滅裂ぶりでした。社会人になってからのエロオヤジぶりも健在で、まったく魅力を感じさせません。
その一方で、田沼雄一も引いた形ながら登場します。節子さんも健在ですが、太田の相手として圭子ちゃんも出てくるので、カップル二組はさすがに見ていてめまぐるしい。おまけに最後は雄一と節子が結婚することになったで締めていて、「若大将引退」を印象づけようとしたのかもしれませんが、これでは誰が主人公なのかわからなくなってきます。
とはいえ、本作にも取り柄はあります。まず原一民の撮影が美しくてよろしい。岩内監督の演出も、鏡の効果を要所に使って面白い。ただ、「アダムとイブのように」の場面は、なぜ色を変えたのかよくわかりませんでしたが……。また、新ヒロインの吉沢京子も若くてかわいらしく、その影響もあってか酒井和歌子がちょっと大人っぽく感じられるのもプラスです。個人的には、この2人が話し合う場面が、全編のクライマックスでした。圭子の気持ちを書いて見せるのはなかなか泣かせる展開ですが、やはり太田が主人公であるのなら、圭子が鈴鹿に行って直接告白するのがスジだと思うのですが。
まあそんなこんなで不満の残る作であり、結局大矢茂の若大将はシリーズ化されずに終わってしまいました。もともと観客が見たかったのは「加山雄三の若大将」なのですから、それで当然という気がします。