1.《ネタバレ》 ちょっとは泣けてきてもよさそうな話なのに、まったく泣けなかった。
まず、ゲイカップルのラブシーンが生理的に受け付けない。
レズカップルなら平気なんだけど、ドン引きしてしまう。
それがそもそも差別意識だと短絡的に結び付ける人もいそうだけど、そういうわけでもない。
この嫌悪感は、あえて例えるなら自分の両親のベッドシーンを想像するのに近いような気持ちの悪さだろうか。
もちろん、両親に愛情はあってもだ。
その生理的な気持ち悪さは、人格や人権の否定にはつながらない。
性的指向は個人の自由なので、誰が誰を愛そうが誰に迷惑をかけるわけでもない限り勝手にやればいい。
マルコのことを最も親身に考えていたのはルディとポールであり、二人が育てるのが最も適しているにも関わらず、同性愛を理由に執拗に阻もうとする人達の意味がわからない。
そういう子供を自分の子として愛をもって育てようなんて、そうそうないほどありがたい話だろうに。
登場人物の心情がきちんと描ききれていないような気はする。
ルディの少年への深い思い入れは、同じマイノリティへの共感があったのか、それとも子供を産めない二人が家族を持ちたかったのか、掘り下げ方が少し物足りない。
ゲイカップルとマルコのつながりが切っても切れないほど深くは感じられなかったので、もっとエピソードを重ねたほうがよかった。
ポールの上司がポールをクビにしただけではなく、わざわざ裁判にまで首を突っ込んだのも不可解。
よほどの恨みでもないと、よくある差別意識だけでは説明がつかない気がする。
上司が人格障害の偏執者のように感じられた。
また、ダウン症の少年が死ぬ映画というのも、作り手のあざとさのようなものを感じてしまう。
それでも、しっかり感情移入できるきめ細かい流れがあれば泣けもしただろうけど。
実話に基づくというふれこみが衝撃的だが、フィクション部分も多い。
インタビューによると、薬物中毒の母を持つ障碍者の子供を世話をするルディのことを知り、それにインスピレーションを得て、もしゲイカップルがそういう子供を養子縁組しようとしたらどうなるのだろうかという着想で作り上げたシナリオなので、実際子供が死んだわけでもルディが裁判を起こしたわけでもないようだ。
最後の手紙はじんわりと効いてとても良かった。
ただ、そこに至るまでに入り込んで熱くなってはいかなかったので。