2.《ネタバレ》 『ROMA/ローマ』に影響を受けているのか、モノクロで監督の半自伝であることも共通している。
ただ、『ROMA/ローマ』のような灰汁の強さはなく、事情をよく知らない少年の目線で描かれているので、
複雑な社会情勢を調べなければならないという敷居の高さもない。
むしろサッカーに興じ、少女との淡い初恋、万引きを唆されたりと、
緊急事態が日常になっている中で懸命に生きる少年とその家族を活写しているところに重点を置いている。
ただ、劇中劇だけパートカラーで、劇伴もここぞと効果的に挿入される、その演出にあざとさを感じてしまう。
わざわざモノクロで描かないといけない理由が全く感じられなかった。
芸術性の高い作りが少年の溌溂とした物語とチクハグで合ってない。
これが作品の没入感を割いているように感じた。
短い出演時間ながらも最後をかっさらうジュディ・デンチは流石と言ったところ。