3.役者が凄い。イギリス系の名優をずらっと揃えて、アーミン・ミューラー・スタールで押さえている渋さ。あとプラハの街の白黒による陰影も見ものと申しておきましょう。でも映画はノレなかった。監督はいわゆる「カフカ的」にならないように製作した、って言ってるけどどうなのかなあ。作者ってのは出来上がってから気がついた欠点を指摘されるのを予防するために、何らかの発言をすることってあるからな。これなんかカフカ的ってとこを、上滑りした物語に思えた。「カフカ的」って言葉の使い方だよね。現在カフカを生かすなら、カフカ的世界を作るんじゃなくて、現代をカフカ的方法で描くべきなのであって、何も主人公をカフカにする必要はない。カフカのエピソードや作品の断片をちりばめて、けっきょくカフカ的雰囲気に浸りたかっただけに見えちゃう。カフカのドタバタ的側面(弟子)を描いたのは目新しいけど、「笑う男」なんか反カフカ的に思えた。ヒッチコックのほうがよほどカフカだ。名前負け。