2.《ネタバレ》 個人的には事前情報を徹底してカットした今回のアプローチはとても良かった。
鑑賞後に物足りなさを感じたのは事実だし、人に勧めたくなるほど面白い訳でもなかったが
上映開始に至るまで完全にベールに包まれている映画の鑑賞というのは、
めったに出来るものでは無いし、このドキドキ感を味わえただけでも良い経験が出来たかなと思う。
前述した通り、事前情報無しがこの映画の良いところの一つなので
未鑑賞者はこの先で述べるネタバレ感想は見ないことをおすすめする。
※ネタバレ感想
「異世界に迷いこみ数々の試練を乗り越え、精神的に成長して現実世界に戻ってくる」
こういった筋書きはジブリだけで見ても、既に「千と千尋の神隠し」と「猫の恩返し」でもやっているが
このテンプレートでしかない安直な構造の物語を、何と宮崎駿の最終作でもなぞっている、
もっと端的に言えば時代背景と登場人物を変えただけの千と千尋のセルフコピーのような印象すら覚えてしまった。
この既視感によるマイナス要素を除いたとしても、そもそもこういった異世界を舞台にした物語は
荒唐無稽な展開が許されてしまうし、いくらでも話の折り合いが付けられるため
見ていてあまりのめり込めず、自分はどこか白けて見てしまい、
登場人物に感情移入したり、作品世界に没頭したりといったことが出来なくなってしまう。
物語にこそ馴染めなかったが、異世界の描き方については宮崎駿の健在さを感じさせてくれた。
死生観を感じさせる荘厳さと、夢の世界かのような珍妙さ、そして不気味さがない交ぜになり
奇想天外でユニークだった、まあこれも千と千尋の良いところをそのまま挙げたようなものなのだが…。