1.まず、始まりの音楽と映像が素晴らしかった。
海の映像と、そこに流れるゆったりとしたクラシック音楽。
それらにぼぉ~っとしていると、突然、“おじいさんフェリーニ”が登場。
“働き盛り”のフェリーニとは全く違った雰囲気でびっくり。
全く、若かりし頃の面影がない。
これにはちょっとショックだったかも。
70歳ちょいで亡くなったことを考えると、かなり健康も害していた時期だろうから、この不健全な雰囲気は仕方ないんだろうけど・・・
それにしても「理屈っぽい」。
ひたすら、“オレ流の映画論”や“フェリーニ流人生論”をしゃべり続ける。
フェリーニ作品の全てを観た後に、これらのドキュメンタリーを観れた点は良かったと思う。
しかも、ここ1,2年でその全ての作品を観たので、ドキュメンタリーを観ていても、すぐにそのシーンが頭に思い浮かんできた。
「あぁ~、この俳優さん、こんなになっちまったのか・・・」
とか、
「このシーンはこんな風に苦労して作られたのか・・・」
とかみたいに。
本作『大いなる嘘つき』には、フェリーニに縁(ゆかり)のある俳優さんが何人か出てくる。
その中でも特に印象的だったのは、ドナルド・サザーランド。
『カサノバ (1976)』について彼が振り返り、その最後のついた“ためいき”が、とてもリアリティがあった。
「即興で彼(フェリーニ)は脚本を変えてしまう。ある時、彼は3ページに及ぶ独白を私に5分で憶えろと言ってきた。その後、5分後に本当に撮影が始まった。彼は悪魔だ。」
といった様な内容だったと思う。
その最後に、深い“ためいき”が出たのだ。
それはそれは深くて真実味のある“ためいき”だった。
私もこのブログで記事に書いているが、私にとって『カサノバ』という作品は、フェリーニ作品群の中で、最も体力を奪われた作品だ。
この作品は、言ってみれば“フェリーニ映画の集大成”的な作品。
晩年の“フェリーニ・ワールド”が最高潮に達した、非常に濃い作品だ。
そんなに面白いとは思わなかったが、そのあまりの“フェリーニ色満載”さに圧倒されたのおぼえている。