2.《ネタバレ》 それほど悪くはないストーリーだとは思うが、悪い意味で裏切られる映画だ。
予告編や全体的な雰囲気から、トム・ハンクスが演じるトンでもない議員がトンでもない手法でトンでもない活躍するというコメディ的な要素を期待していたが、思っていた以上に真面目な社会派的な映画という仕上がりとなっている。
確かに、実在の議員を扱い、実際のソ連によるアフガン侵攻を描いているので、それほど不真面目に作るわけにはいかない。
ただ、真面目な映画ではあるが、中東の事情に全く疎い自分にも分かるようにかなりレベルを落として描いてくれている。たとえ知識がなくても、それなりに興味と常識のある人には楽しむことはできる仕上がりとなっているのは助かる。
「冷戦」「共産主義」「宗教」「政治」「議員」「金」という複雑で難しいテーマを平易に描き上げた点は評価できそうだ。
ただ、レベルを下げたことによる功罪も浮き彫りになっている。
分かりやすく描こうとしたため、“深み”や“重み”を完全に失ってしまっている。
チャーリーはかなり難しいことをやっているはずなのだが、その“困難さ”が見えてこない。大きな壁にぶち当たることなく、低いハードルを何度も超えているようなイメージであり、「グッジョブ」と彼の偉業を称えたいとは思えないのが残念だ。
様々なコネや恩義や人材を利用して、現地に飛び、人に会い、委員長を説得して、予算を増額するだけだ。
何もかも簡単に上手く行き過ぎており、それぞれの思惑もみえてこない。
本来の政治とは利害に絡み合っており、実に複雑なものだ。
国内の政治でさえ難しいのに、国同士が絡み合い、更に事態は複雑なはずだ。
近隣諸国のうち一部の人間にはソ連を支持するところもあるだろう。
そもそもチャーリーの内面もそれほど描かれているように思えない。
彼の内面や動機は「アフガニスタンでの悲惨なニュースをみました」「予算を500万ドルから倍増してみました」「難民キャンプを見て子ども達が爆弾で悲惨なことを知りました」というような単純なものではないとは思う。
アメリカ人が、「ソ連との冷戦」を振り返り、「アフガンでアメリカが行ったこと」を知り、「タリバンやアルカイダの誕生」の側面を知る映画としては悪くないが、日本人にはこの問題に対して、それほど興味がないと思われるので、トンでもない議員が活躍する映画だと思ってみると拍子抜けするだろう。