2.北欧の凍てつくような空気感と澄んだ映像美の中で、少年の淡い恋心と憎悪が混じり合っている。
孤独な少年は、ヴァンパイアの少女と出会ってしまったことで、何を得て、何を失ったのか。それは決して明確には描かれないが、その両方が彼の人生にとってとてつもなく大きなものであったことは間違いない。
長い長い逃避行の始まりのようなラストシーンには、希望と絶望が混在していた。
あまり観たことがない異国の映画を観ると往々にして生じることだが、ふとした表情や言動の意図することが理解出来ないことがある。
この映画にもそういう場面が多々あり、感情移入の障害になってしまったことは否めない。
少年と少女の間に終始生じている距離感をどう捉えるべきかということを、最後まで消化出来なかった。
“ヴァンパイア”というモチーフを用いて真面目な映画を作るのは、実は難しいと思っている。
当然ながら、どこまでいっても空想の産物でしかないし、異形のものと人間との間で普通の心理描写が成立するものなのかと、疑問が産まれる。
この物語にしても、少女は12歳の姿形をしているけれども、その内容は人間とは全く別ものなのであって、そこのまともな精神構造が存在するとは思えない。つまるところ、普通の人間の少年と異形のものの少女との間で、心が通じ合えるわけがないと、つまらない思索をしてしまう。
そういうもうひとつ入り込めない要素は点在していたが、それらを覆い隠すだけの美的センスは溢れていたと思う。
遠い国の冷たい空気感の中に身を置き、静かに堪能すべき寓話だと思う。