2.《ネタバレ》 漫画を題材として映画ならではの特性を活かすとするならば、要となるのは必然的に絵を描く行為の具体性、身体性という事になるだろう。
例えば、絵が姿を現していくキャンバスをそのまま捉えていくクルーゾーの『ピカソ』。
例えば文字を書く手と鉛筆の動きをアクションとして、表情として捉える柳町光男の『十九歳の地図』。
本作では、まず野蛮なまでに荒々しいペンの音が描き手の生々しい息吹を伝えてくる。
それだけで充分に格闘の具体的描写となっているのだから、ライバルとの格闘イメージシーンなどは逆に意味として概括してしまっているようで
アクションが際立たないという転倒が起こっている。
入稿締切までのタイムリミットにも時間の具体的な提示が欲しい。
何しろ、逆光ショットの多用によってとにかく画面が暗いという印象がまず来るのだが、
学校の階段上、通路、病院のベッド際、暗い室内から見るテレビ画面内の上段と、
ヒロインの小松菜奈が特権的に光芒を放つという映画的な論拠もあるだろう。
『ゲゲゲの女房』に続いて、宮藤官九郎の漫画家像がいい。