5.《ネタバレ》 リチャード・ドナー監督の降板により、2作目の途中から参加したリチャード・レスター監督が、満を持して最初からつくった作品。私は当時、映画館で観ましたが、観る前から嫌な予感はしていました。何故なら、レスター監督は、あたかも「この世に英雄は存在しない。たまたま運よくそうなっただけであって、普通の人間に過ぎない。だから、通常の活劇のカタルシスについては、“そんなに上手くいきっこないだろ”というように、徹底的に茶化してやる」とでも言わんばかりの演出をすることがあると知っていたからです。三銃士(1973年)が、その典型だと思います。
実際に観て予感は的中しました。主人公は、どちらかというとコメディアンのリチャード・プライアーが演じるガス・ゴーマンになっていました。興行サイドが大々的に宣伝していたスーパーコンピューターとの戦いも「とりあえず挿入しましたよ」とでもいうような、あっさりしたものになっていました。私は「ああ、やっぱり」と思いましたが…あまりにも1・2作目と作風が違っていたため、それまで【スターウォーズ派とスーパーマン派】に二分されるほどの人気を博していた当シリーズへの世間の熱狂は、急激に冷めていったのを、今でも覚えています。
ただし、個人的には感心する描写もありました。それは、クラーク・ケントについてです。それまで、クラークは「スーパーマンの仮の姿」という位置づけになっていました。しかし当作品では「クラーク・ケントという人格がベースにあり、その正義感を前面に出したのがスーパーマンなのだ」といった描き方をしていました。当作品の真のクライマックスは、クラーク・ケントとスーパーマンとの戦いの場面だと思います。
さて、採点ですが…非常にレスター監督らしい作品だとは思いますが、人によって好き嫌いがはっきり分かれると思います。現在なら「1・2作目が構築した世界観を基にした番外編/スピンオフ作品」として歓迎されるかもしれませんが、その意味では早すぎた作品と言えるかもしれません。映画館でタイムリーに観た当時のインパクトだと3点ですが、スピンオフ作品と考えるなら7点ということで…