12.《ネタバレ》 「歌っている時の自分が好き」だったナルシストな主人公が「歌う事が好き」になるまでを描いた一品。
恋の妄想に耽り、興奮で鼻血を出してしまう女子高生という、ベタベタな演出を受け入れられるかどうかで、評価も変わってきそうですね。
コメディ映画というジャンルとも少し違っていて、コント映画という印象を受けました。
ゴリや間寛平といった面子が出演している事も、そんな雰囲気を濃くする効果があったように思えます。
そして、この二人がまた良い役どころを演じていたりするのだから、心憎い。
「必死になっている顔に疑問を持つような奴は、一生ダセェまんまだ」
という一言は、特に素晴らしくて、本作最大の名台詞でしょうね。
自らの歌う時の顔が、まるで鮭みたいだと悩む女子高生の孫娘に対し
「大きな口を開けて笑ったり、歌を唄ったりしている時の顔が、一番じゃ」
と話して、悩みを吹き飛ばしてくれる爺ちゃんも、これまた最高。
そんな具合に本作を「コント映画」として楽しんでいた自分としては、尾崎豊リスペクトである湯の川学院の合唱部を応援してしまう気持ちがあり、オオトリを飾るのが主人公達となる事を、残念に思っていたりもしたのですよね。
でも、クライマックスの「あなたに」を聴いた瞬間に、不満も吹き飛んじゃいました。
客席の皆も次々に立ち上がって歌い出す演出は、凄まじくベタで、観ていて恥ずかしいような気持ちになってくる。
それでも、そんなベタな王道演出を、しっかり正面から描いてみせたという作り手の熱意、勇気も伝わってきたりするものだから、自然に感動へと繋がってくれました。
あえて欠点を挙げるとすれば、ストーリーが王道の「部活もの」といった感じで、合唱を題材に選んでいるのに、特に目新しさは感じられない事。
主人公が恋している生徒会長の男子に、魅力というか、恋するに足る説得力を感じられなかった事。
そして、女性ディレクターに、生徒会副会長である恋敵の少女など、今一つ存在意義の薄い人物がいたりする事でしょうか。
全体的に、完成度が高いとは言い難いのですが、皆が楽しそうに合唱する姿を見れば、細かい点は気にならなくなりますね。
「必死になるのは、恥ずかしい事かも知れない」「でも、必死になる姿は間違いなく美しい」というメッセージが込められた、良い映画でした。