5.《ネタバレ》 見えるものが全ての人間にとって、信仰は救いになるのか?
息子を殺されたシングルマザーのシネは、自分を如何に大きく見せようと振る舞い、
その誘拐犯に対する赦しも優越感によるものである。
だが、犯人は信仰で既に赦され救われていた。
宗教に失望した彼女にとって、これほどの生き地獄はないだろう。
神はただそこにいるだけで何もしてくれない。
代わりに片思いのジョン・チャンが、壊れていく彼女の傍に何も言わず寄り添う。
神も仏もない不条理の世界において、俗物であろう彼の存在は生きていく上の"密陽"ではないか。
誰も目にも映らない小さな小さな希望。
死ぬことすらできなかったシネは彼の存在にいつ気付くのだろう?
たとえ自分自身を赦せなくても、既に誰かから赦されているのに…
残酷な世界に淡く小さい陽光の差すラストカットが秀逸。