8.《ネタバレ》 原作未読。1ページも読んだことはない。
デスメタルの知識もないので、ジャック役の人がもともと何者かもよく分からなかった。
しかし、鑑賞前から気分が悪くて、テンションが低かった自分でも、体調の悪さなど吹き飛ぶほどに楽しむことができた。
最後は加藤ローサのように「ゴー・トゥー・DMC!!」と叫びたくもなった。
変な前知識もなく、比較材料もないからこそ、かえって楽しめたのかもしれない。
やはり、なんといっても根岸と社長のキャラクターに、松山と松雪をキャスティングできたのが成功といえる。
松山よりも松雪に驚かされたが、ダウンタウンとコントをやっていただけのことはあり、思い切りの良さが目立った。
ストーリーは恐ろしく基本に忠実のもの。
“夢”というキーワードを基に、青春映画の教科書通りの「成功」→「挫折」→「克服」という流れを踏んでいる。
基本に忠実なストーリーに対して、異世界のデスメタルという素材を掛け合わせた効果が意外と高い気がする。
もし王道素材に対して王道路線で描いたらつまらないものとなり、逆にアブノーマルな世界を描く映画に対してアブノーマルな方向で描いたら、恐らく誰もついていけなくなるだろう。
珍しい素材を王道ストーリーで攻めたおかげで、誰もが楽しめる映画に仕上がった。
また、デフォルメされているが、根岸というキャラクターが我々自身の姿と被らせることもできる。
幼い頃に思い描いた“夢”と現在の状況とは異なるかもしれないけれども、“夢”を追い続けていれば“道”は開けるのかもしれない。
その“道”も思い描いたものではないかもしれないけれども、何が正解で何が間違いかなどは誰も分からない。
一生懸命にやっていれば、誰かが共感してくれたり、誰かが応援してくれたりもして、その“道”が自分の“夢”へと気づかないうちに変わることがあるのかもしれないというようなメッセージとして受け取った。
完璧ともいえず、天才とも思えないが、笑いのセンスも悪くない。
笑いについてはよく分かっているなという演出家だ。
直球の笑いもあったが、変化球の笑いが多く、それがなかなかツボだった。
映画のレベル自体は高くないもの、点数については甘めの7点を付ける。
6点にするか悩みどころだが、それなりに楽しむことができたのでおまけしたい。