16.《ネタバレ》 【前置き】
コロナウィルス感染防止の為に施行された緊急事態宣言が解除され、久々に映画館で観た映画は「Dead Din't Die」だった。
「パターソン」が思いの外良かったので、久々の劇場体験に相応しいと思ったのだ。
だが… 残念ながら「Dead Don't Die」は正直今一つだった。
辛口のレビューを上梓しようと思っていたのだが、一風変わった作風を持ち味とした監督さんの作品をたった2作観ただけで
偉そうな批評を書くのは余りにも無礼だと思い、いわばルーツとも言える本作の鑑賞を決めた次第。
【本題】
本作と「パターソン」、笑える位に作風は変わっていないと感じた。
映画に対する監督の少し冷めた、でも愛情の有る視点も同じ。
異なるのは色が付いた事と俳優陣が豪華になった事位では。
まるで隣の気のいい兄ちゃんの生活をそのまま再現している様な話の流れ、
人が死ぬ等の事更に観る人の感情を煽る様な描写は皆無。
物語(?)は少数の登場人物が繰り出す必要最小限な朴訥且つシニカルなセリフと比較的短いカットで紡がれていく。
予備知識無しの場合、恐ろしく退屈な映画なのではないか?と思ってしまいそうだが、
絶妙な存在感の叔母さん(恐らく素人さんでは?)やヒロイン:エヴァ役を演じる女優さんのエスター・バリントを筆頭に、
何故か飽きずに最後まで見届けてしまう。
悲劇とまでは言わないけれど、落ちの付け方も面白い。
この絶妙な空気感はあざとく狙って出せる物では無い。
ジム・ジャームッシュ監督が不世出の存在で世界中の業界人から愛されている理由の一旦を垣間見た気がする。
さて、それでは"Dead Don't Die"のレビューに取り掛かる事にしましょうか。