2.《ネタバレ》 その男が何かやっているかやっていないか。殴り合いになった瞬間に分かっていたら遅い。始まったときには既に力量の差に押しつぶされるからだ。逃げ場があればいい。止めてくれそうな人間の前でふっかけるのも手としては、良い。負けは一瞬では決まらない。一瞬で決まっているのは、確実に負けた状態に至る大量の伏線で有り、それを一つ一つ回収しながら、殴り倒されるのだ。それならば、はじめから逃げの手を方々に打っておくべきだ。そうやって、力量ではなくいろいろなダメージの量で勝つのも一つの殴り合いだ。
はっきりとクソつまらないストーリーが大雑把な脚本に大胆な実装がなされたSPシリーズは、テレビの時から衝撃であった。なかなかのイケメンであるはずの岡田准一は、その小柄を生かした格闘シーンをリアリティ満載で描く。はっきりと岡田准一の力量に支えられたその骨子は、太い。ただひたすら太い。力不足の監督や日本と日本人を勘違いしているとしか思えない脚本や、適役とは思えない役者たちの群れに囲まれて重機のように前進する。
逃げの布石を打てば良いのに打たない。この男は太い。それが岡田准一だ。CGと光源が合っていなくたって、演出のために武装を捨てて素手になってもだ。迫真の格闘の質は等価である。ブルースクリーンの前で格闘を演じる岡田准一の技術の後ろに何があろうと、青いただの背景でもかまわないのである。
CGがトランスモーファーの様にヘボい。脚本が赤ん坊の吐瀉物。設定がミジンコの排泄物。犯行の動機構成が領海侵犯の良い訳程度。仏像泥棒の裁判理論程度。それでも、この映画が無類の面白さを誇るのは、岡田准一が魅せるからなのである。
セガールみたいで良いよね。ね?