6.《ネタバレ》 特に大きな山場も無いのに、最後まで引き込まれました。
達夫、拓児、千夏の3人のキャラクターに役者がピッタリでした。
綾野剛は、こういうグダグダしたヘタレだけど、芯がぶれてなくて気持ちが優しいというキャラが上手いし、
菅田将輝も、明るくてくったくなくてバカだけど根が良い奴ていうのがハマってます。
そして何より引き付けられたのは池脇千鶴。
彼女の演技を見るのは多分初めてですが、何もかも受け止めて包み込む包容力のある千夏そのものに見えました。
割とその辺にいそうなちょっと可愛いお姉さん風で、スタイルも肉感的で、やたら細かったり人工的な感じではないところが、この作品の雰囲気に合ってました。
千夏には、男のずるさもワガママも何も見返りを求めずただ受け止める包容力、いうなれば母性があります。
酷い家庭環境でも逃げ出さずに受け止めて対処してる。
対処の仕方が一般的ではないとしても、誰を責めるわけでもなく、しょうがないじゃない私がするしかないんだから、という感じで黙々とこなしてます。
最初は、達夫が千夏が売春をしてるのを知った後も気持ちが変わらないのは何故かと思ってましたが、見ているうちに理解しました。
達夫が自分のトラウマを千夏に話したとき、千夏が「だから、あたしみたいな女でいいんだ」と言うと「そうじゃない」と否定してました。
傷心の達夫は、本能的に自分を丸ごと受け止めてくれる千夏の包容力を求めたんですね。
人間としては達夫や拓児よりクズ度の高い社長(高橋和也)も、ただ都合の良い女として千夏を扱っていたのではないことは言動でわかります。
達夫が「家族を大切にしてください」と言ったとき、「大切にしてるから、おかしくなるんだ」という捨て台詞は良かったです。
達夫が山へ戻る気持ちになり、3人にやっと僅かながら未来への希望が見えたあと、そのままハッピーエンドにはならないだろうと思いましたが、誰も死ななくて良かったです。
そしてラストの美しい海岸でのシーン。
泣き笑いの千夏とつられて弱い笑みを浮かべる達夫。
どん底の中わずかな希望を感じさせ、黒い画面に白抜きでタイトル。
狙ってた感が漂うとはいえ余韻の残る終わり方は良いと思います。