11.人間ドラマ部分は、冒頭の家族のシーンをはじめとして顔面アップのくどい、
相変わらずの平坦な主流ハリウッド式画面が続く上に、怪獣映画の宿命的な理屈付け
に費やされるのだが、ひとたび特撮シーンになると画面は俄然、密度と奥行きを増す。
退避区域に打ち捨てられた車両のドアミラーに、対岸の風景
つまりカメラの背後の画を映り込ませたショット。
または、バスの窓に映るゴジラの背鰭と、それをバスの中から見上げる子供たちと
を重層化させたショット。etc.
反射物を利用して一つの画面空間に奥行きを生む工夫だ。
対峙する怪獣2体を、間に挟まれた人間が交互に振り返りながら仰ぎ見るショット。
津波に埋もれる街路から、次々と停電していくビルの窓を追いながら上昇し、
屋上から発射された照明弾を追っていくと、
左手に巨大生物の皮膚が黒光りしながら浮かび上がってくるショット。
これらはカットを割らずにカメラを持続的に移動させて空間を広げることで、
立体感と巨大感を生む工夫だ。
その持続的なカメラは、ゴジラの見得切りのタメと外連でもある。
ビル群や粉塵の演出は勿論のこと、海鳥をその周囲に飛ばせること、
チャイナタウンの瓦屋根や
赤い提灯を画面手前に配置しての構図取りなど3Dを意識した芸も細やかだ。
東宝特撮映画には必須の、火薬大爆破シーンも取り入れて抜かりない。
ドラマにかかわるわけでもない、退避地区の野犬や線虫。津波に追われる犬。
東海岸のコヨーテや海鳥など。役割がなくとも何気なく画面に現れる動物たちも
映画を単調にさせないアクセントとして気が利いている。