9.《ネタバレ》 あらすじを知って(やれば出来る、の見本のような話だな……)と思っていただけに、劇中にて塾の講師が「やれば出来る、という言葉は良くない」と言い出した時には、驚かされました。
その後に「やっても出来なかった時に、挫折感を味わってしまうから」と説明してもらう形となっており「なるほど」と大いに得心。
実話が元ネタで無ければ「有り得ない」「大学受験を馬鹿にしている」と批判も受けてしまいそうな非現実的ストーリーゆえか、登場人物もステレオタイプな描き方。
塾の講師と、学校の先生の描き分けなんて、正に善と悪。
理想の教師と最低の教師という対比となっており(ここまでやっても良いの?)と最初こそ戸惑いましたが、結果的には思いっ切り極端化させた事が、成功に繋がっていたように思えますね。
主人公同様に、観客も余計な懸念は捨て去って、講師を全面的に信頼し、純粋に受験を応援する気持ちになれたかと。
また、上述の「最低の教師」を後半あまり登場させず「嫌な奴を見返してみせた」という陰湿な復讐の快感をズルズル引っ張らなかった事によって、終盤の爽やかな成長物語に繋げた辺りも、お見事でした。
母親が苦労して塾の費用を工面した件では(これは何としても頑張ってあげないと!)と思わされたし、父親の「野球馬鹿親父」っぷりなんかも、説得力があって良かったです。
私的な事ではあるのですが、身近にあの親父さんに良く似たタイプの人がいるもので、確信を持って「こういう人、いるよ」と言えたりするのですよね。
その父親も完璧な悪役にする事は無く、ちゃんと良い部分(困った人は見捨てられずに人助けする場面)も見せる辺りなんかは、不器用なやり方でしたが、何だか凄く嬉しかったです。
この作品に関しては、全体的に「実話ネタである」事が上手く作用していたみたいで、恋愛要素が極めて薄い辺りなんかも好印象でしたね。
これが完全な創作であれば、先生なり同じ塾の生徒なりと恋に落ちていたかも知れませんが、そういった要素は取っ払い、受験のみに専念してくれたので、安心して楽しむ事が出来ました。
野球映画を観た後に、キャッチボールをやりたくなる。
音楽映画を観た後に、歌い出したくなる。
それと同じように「ビリギャル」を観た後は、勉強してみたくなったのだから、間違いなく良い映画なのだと思います。