2.《ネタバレ》 人間の目を背けたくなるような嫌な部分をえぐりだすのがうまい。
冒頭でのバスの優先席をめぐるやりとりで、早くも主人公・武志の闇がうかがえる。
男同士のドン引きするような会話。色欲。計算高い野心。女のほうもしたたかさでは負けていない。女特有の嫌らしさ、プライド、嫉妬。
殺された田向は欲しいものには手段を選ばず労力も惜しまない。目指す就職のためにはコネを持つ女と付き合って平気で利用する。確信的なエゴイスト。欲しいものは手に入れるが、敵も多いタイプ。妻・友希恵も他の人を踏み台にしながら自分の幸せを追求する女。
あちこちで恨みを買っていそうな夫婦と幼い子を惨殺したのは、一体誰で、どういう恨みからなのか。
事件のサスペンスとリンクして、武志と光子の兄妹の抱えた闇が明らかになっていく。
妹への思いに兄弟愛を超えたものを感じたので、光子の子の父親のオチは途中から予想がついてしまった。
元々は兄妹の両親がろくなもんじゃなかったのが大きな要因。その両親のそれぞれの親たちにも問題があったのかもしれない。負の拡大再生産だ。
名家のお坊ちゃんお嬢ちゃんが通う名門大学では、セレブの多い内部進学者と外部からの入学生の隔たりがよく言われる。
内部進学者が外部生を下に見て相手にしないとしても、外部生がセレブの内部進学者にあこがれたり媚びるのがおかしい。
いろいろ出てきた愚行の中でも、その愚かさが印象に残った。
親から受け継いだものだけで他を見下すような手合いは、それこそ相手にする価値もないつまらない人種なのに。
光子もそれがなければ友希恵とも関わらなかったろうし、違った人生を歩んだに違いない。
内部学生らの性処理道具にしかならなかったのが、愚かで哀れだった。
恵まれた家庭ではなかったからこそ、何不自由のないセレブな学生たちに引寄せられたのだろう。
また、父親との体験から性的なハードルや自己評価が低くなっていたこともあるだろう。
それぞれのキャラやストーリーはあまりにステレオタイプにすぎる印象を拭えなかったが、妻夫木と満島の兄妹を始め、キャスティングが良かった。
妻夫木の頬の傷跡が役にプラスになっていたし、満島はキレイだけど健康的ではない病的なものが滲み出ていた。
小出恵介は例の淫行騒動があったせいで爽やかなイメージがなくなったのが逆に役にハマって見えたし、松本若菜も美しい悪女がピッタリだった。