1.春先、子どもたちを連れての“ドラえもん映画鑑賞”は、毎年の恒例となってきた。
父親としても、映画ファンとしても、ドラえもんファンとしても、嬉しい恒例行事だ。昨年に続き、今年も二人の子どもと、友人親子らと共に鑑賞。
コミックスの一エピソードである「異説クラブメンバーズバッジ」を原案としたストーリー構成が、原作ファンとしては興味深く、小説家の辻村深月が脚本を担っていることも功を奏し、世界観の広がりを携えた物語構築をしてくれていたと思う。
「月」を舞台にした物語は、「ドラえもん」の世界では意外に少なく、地球にとって最も身近な天体である月を舞台に長編化することは、“F先生”にとっても実は悲願だったのではないかと勝手に想像する。
原作エピソードを原案としているのだから当然ではあるけれど、「大長編ドラえもん」シリーズを原作としない“オリジナル”の映画作品の中では、これまでで最も「ドラえもん映画らしいドラえもん映画」と言えるのではないかと思った。
描き出されるテーマは、家族や友達を中心とした「絆」であり、それ自体に目新しさはないけれど、決して安直なウェットさを全面に押し出さないストーリーテリングに好感が持てた。
世代を超えた膨大な時間や、生物的な異なり、幾つもの銀河を超えた果てしない距離、そういった登場人物たちを取り巻く大きな“隔たり”を踏まえた上で、手を取り、助け合い、苦難に打ち勝っていくさまを紡ぎ出したストーリーには、表面的な分かりやすさと共に、深い物語性が共存していたと思う。
というわけで、作品自体のクオリティーは高かった。
昨年の「のび太の宝島」鑑賞後は、ストレートな“父子の絆”を受けて「泣けたー!」と言っていた娘だったが、今回は「涙は出んかったけど、とても面白かった」と真っ当な感想を述べていた。
そんな子どもの様子も微笑ましく横目に見ながら、原作ファンとしては、ムス子、あばらやくん、多目くん、ガリベンくんら、原作の小さなエピソードでしか登場しないのび太のクライメイトたちが、冒頭の学校シーンでさり気なく映り込んでいたことに、製作陣の原作愛を大いに感じた。
エンドロール後の「特報」を見た限りでは、来年のドラえもん映画の舞台は“恐竜世界”のようだ。
「のび太の竜の騎士」のリメイクか、今回のような小エピソードの長編化か、まったくのオリジナルストーリーか、例によって父親が子どもたち以上にワクワクしている。