5.《ネタバレ》 飲んだくれオヤジの戯言を、延々と聞かされている感覚。
江分利満氏の酒に付き合わされている、周囲の登場人物に完全に同化して、後半部分を体感した。
いやぁ、酔っ払いの相手は辛い。
でも、これぞサラリーマン。
戦後、サラリーマン的な生活が当たり前になり、それは現代も変わらない。
この映画で描かれているような悲喜こもごもは、今も決して変わってはいない。
戦争中でない限り、この映画で語られていることは、普遍的なものである。
人は、特に男は、苦しい生活の中から、たまに訪れる、ほんの些細な幸せを感じるために生きている。
いや、幸せがいつかやってくると信じて、生き続けている。
人生は苦しいことの連続であって、躍り上がるような幸せな瞬間なんて、そう沢山あるわけじゃあない。
そんなサラリーマンの悲哀が、独特の語り口で展開される。
数ある日本映画の中でも、稀有な作品。
何度も観たいとは思わないが、一度観たら、忘れようのない作品だ。
小林桂樹の、地味でいながら入魂凄まじい、その演技に、拍手を送りたい。