3.《ネタバレ》 貧者の犯罪、「社会が悪いんだ」という告発が目新しかった戦後という時代。次作の『自転車泥棒』に比べるとまだ切迫さはないが、こちらは友情が大人の思いによって引き離されていく痛々しさがある。よく作られている。ベルトでぶたれていると思い込まされて、友情のために白状してしまうことが、逆に裏切りとされ、密告される。そのときの本当のベルトの痛みを、ラストで与えようとして殺してしまう、というシーソー。最初は何の契約書も交わさずに合同出資するほどの信頼だったのが、裏返されていくにつれ、より強くなる面とより憎む面とに増幅していってしまう。脇が充実しており、ワルの奴、間を取り持とうとする奴、肺病持ちでフィルムの海に感動したあと踏み殺されてしまう奴、などいい。家族愛とそれが他者に対して残酷になるところもしっかり描かれる(長男をかばうためにはみなしごを主犯にしなければならぬ)。馬は何かの象徴と決め付けないほうがいいのかもしれない。