2.今村昌平という監督は真面目な人間、普通の人間にはあまり興味がないらしい。誰からも偏見的な眼で見られ、変人扱いされているような人間を描くことに力を入れているように思える。この映画など正にそれです。明らかに師匠である川島雄三監督の影響を強く受けていることが見ていても解る。小沢昭一のズブやんは確かに普通ではない。しかし、そこには人間が食べていく為に選んだ道がただ普通の人とは違うというだけのことで、食べるために、生きて行くために働かなければならないというそれこそこの監督がこの映画の中で問い掛けている問題だと思います。真面目な人間とそうでない人間との対比という意味からしたらここで描かれている人間像は不真面目に見えるかもしれないが、坂本スミ子の春との関係はけして、不真面目ではなく、それこそ人間らしい愚かな一面を描きつつもきちんとした愛情を見せている。作品全体の空気がやたらとドロドロしているのはこの監督らしいと言えばそうであり、師匠である川島雄三監督の描く可笑しな人間、不真面目な人間、変わっている人間を描く喜劇のような軽快さがまるでないのはいまひとつ好みではないものの、人間の持っているいやらしい部分を描くことに関してはこの監督さんはやはり上手い。