1.雄大な山肌を背にした一本道を荷車が往くファーストショットから素晴らしすぎる。
灌木が疎らに散らばる平原。あたかも演出されたかのような雲の表情。それはいかにも北米西部の荒野の風情だ。函館方向と大沼方向を示す道標から、背後の山が北海道大沼の駒ケ岳とわかる。
続いて函館山から俯瞰した市街、その夜景、そして歓楽街の街路へと画面は移り、バーの店内ではアメリカ人らしき船員らが揉めている。そのバーの長いカウンターテーブルの美術がまた彼国風でいい。
そこへ至る一連の流れも鮮やかだ。
映画は港の倉庫街、連絡船乗り場、湾内の堤防、函館独特の坂道などを奥深いパースを用いながらシネスコ画面を目一杯使って的確にフレーミングしてみせる。
とりわけ、序盤で通りがかりの子供のために風船を買ってやる小林旭の、橋を使った縦構図のロングショットなどは絶品だ。
洋上の船の荒々しいローリングも素晴らしく、ロケーションの魅力が全編に亘って存分に詰まっている。
その揺れる船上で対決する小林旭と宍戸錠も相当なタフであり、殴り合い主体の擬斗シーンもカットを割ることなく、持続的なアクションを当人が見事にこなしている。
ビリヤード台を挟んだ二人の、因縁の対決の瞬発性。
主人公の過去を数ショットに留め、多くを語らない経済性。
シンプルな物語を効率よく語りながら、主題歌のメロディを明確に印象付けてしまう洗練された技能。
それらが、充実しながら無駄のない77分を創り出している。