5.《ネタバレ》 社会派サスペンスの佳作。最後までハラハラする。全員が悪者。痺れる映画。ゴジラの平田氏の悪役ぶりにびっくりした。 【にけ】さん [映画館(邦画)] 8点(2019-01-21 13:42:23) |
4.《ネタバレ》 原作未読。遊び慣れていない生真面目支店長が融資先の女に溺れ、「惨めな人は嫌い(=常務より見劣りする)」と捨てられ、常務への私憤(大部分)公憤(ちょっぴり)入り混じった反撃も悪あがきに過ぎなかった。清張作品ならではのやるせなさを嫌と言うほど味わう事に。風間重吉のイメージがこびりついている池部良の奥歯噛み締めている惨めっぷりは見応え充分。銀行の恥部に触れた場面での丹波哲郎、志村喬は流石の存在感。特筆すべきは平田昭彦演ずる常務の厭らしさで、ジェームズ・メイソン顔負けの腹黒さ全開の送別会に於けるスピーチが圧巻。新珠三千代が奈美役が荷が重かった事を差し引いてもテルミンの不穏な音色に包まれるサスペンスの一級品。 |
3.《ネタバレ》 松本清張の連作「黒い画集」シリーズを東宝が同じく連作ものとして映画化したうちの一本。このシリーズを見るのは堀川弘通監督の「黒い画集 あるサラリーマンの証言」に続いて二本目だったのだが、鈴木英夫監督による本作も非常に面白かった。ストーリーは不倫関係に陥った銀行支店長(池部良)と得意先の女将(新珠三千代)に、女将に横恋慕した常務(平田昭彦)が絡んでくるというものだが、この三人の色と欲にまみれたドロドロの人間模様が実にうまく描かれていて見ごたえがあるのはもちろん、金や地位と言ったものを前にした人間の醜さがこれでもかと言わんばかりにリアルに描かれているところが本作の凄いところで、人物描写も見事。展開が二転三転する脚本もうまく、飽きさせない構成も良かった。ラストがバッドエンドなのもリアルで、社会派映画として銀行の暗部をもしっかりと描いていて単なる娯楽作にしていないところに本作の肝があるような気がする。主人公を演じる池部良は不倫に走ったばっかりに社会の寒流に飲み込まれるという役柄を演じていて、「青い山脈」などで見せる爽やかなイメージとは少し違う印象もあるが、なかなかのハマリ役だった。そんな主人公と一度は結婚をしたいと言いながら後に本心をむき出しにしてあっさりと主人公を捨ててしまう女を演じる新珠三千代。「人間の条件」の美千子のような献身的な役柄もハマる人だが、こういう二面性のある役をやらせてもピッタリとハマるところがこの女優の魅力だと思う。そして、平田昭彦扮する常務のいやらしいこと。この俳優は怪獣映画などで子供のころから見ているが、ここまでいやらしい悪役を見るのは初めてかもしれない。そんなキャスト陣の演技もさることながら、やはり本作を見ていちばん感じるのは人間というもののだらしなさと怖さが痛いほど伝わってくる映画であること。事件らしい事件は描かれず、人死にもないのにここがしっかりと描かれていることによって、サスペンスとしての面白さがじゅうぶんにあるだけでなく、人間ドラマとしても一級のものになっていて、まさに傑作と言える、自信を持って他人に薦めることのできる映画だ。 本当に見て良かったと思う。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-04-24 23:41:46) (良:1票) |
2.素晴らしい点が3つ。1:主要登場人物みんながいやな奴であること。主役の池部良も悪人というほどではないがつまらない仕返しを企んだりする。2:終盤になっても新たな登場人物、新たな場面が展開すること。丹波哲郎のやくざ、宮口精二の探偵などおっ、と思う意外な人物が良いタイミングで登場し退屈させない。特に丹波哲郎の存在感は圧倒的だ。少ない出番にもかかわらず思わず背筋が伸びてしまった。3:テルミンを多用した音楽。無機質なテルミンの音色は余計な情緒誘導を感じさせず、この物語がどっちに転ぶかわからないという点に大いに貢献している 【皮マン】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2011-02-13 17:54:49) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 「殺人」「自殺」「事故死」等、人間の死は一切出て来ないにも関わらず、サスペンスとしては一級品の松本清張原作のミステリー映画。とにかく主役三人(池部・新珠・平田)の色と欲を巡る人間模様と、行き交う視線のからみあいがすさまじい。超エリート銀行員を演じる、平田昭彦っていう役者さん、失礼ながらこれまで「眼鏡をかけたごく誠実そうな久我美子のダンナだった方」っていう地味目な印象しかなかったんですが、よもやこんなに観客に嫌悪を催させるイヤらしい役柄を巧みに演じていたとは・・・知らなかった・・・。噂では良く聞く「夜這い」シーンが、ポルノ映画以外でこんな具体的に描かれる事なんか、滅多にないような気がします。新珠三千代が、のちのちの成瀬巳喜男監督「女の中にいる他人」に連なる「淑女」から「打算する悪女」への転換を、ここでも魅力的に演じてくれてますね。木の葉のように彼らに翻弄されまくる「何事にも詰めが甘い」池部良も、茫洋とした彼のキャラクターに巧く合っていました。丹波哲郎先生の唐突な登場にはびっくり。人なんか殺さなくったって立派なサスペンスは出来るんだっていう見本のような映画。単なる勧善懲悪サスペンスに飽き足らない方は是非これを!! 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-12-26 10:50:59) (良:1票) |