5.《ネタバレ》 DVDジャケットの絵に、大きく満月が背景に描かれている。映画の始まりとともに満月が夜空に浮かぶ。ピー助はやや欠けた満月にむかって遠吠えをする。そして映画のラスト、満月にピンク色のボールにかさなっていく。これら、満月の描き方がこの映画では象徴的である。
映画前半はのび太とピンク色ボールとの関係が細かく描かれていたが、ラストはそれが無かった。もちろん映画の終わりにはボールが登場するが、劇内においては登場しない。代わりに、あのエンディングにしている。これは作り手たちのある意味覚悟があったに違いない。だけども僕はやっぱり最後、ボールとのび太の風景を見たかった。
絵の質感も好感が持てた。過去の継承(不易)と、現代の風(流行)の相克のバランスは、この映画製作において相当頭を悩ませたことだろう。そこで、筆致の妙で流行を表現したのだと感じた。しなやかな動きと涙の表情がよく合っていたと感じた。
過去の優れた作品を(もしくは未熟だった作品を)、現在の技法や感性でリメイクし、新たな視点を与えることは、大変有意義なことだ。それとこれを比較しながら観るのも楽しい。