5.《ネタバレ》 興行面では世界的に不発だった本作ですが、なぜこれが話題にならなかったのかと不思議になるほど面白い映画でした。傑作とは言いませんが、これよりも面白くない大ヒット作なんていっぱいありますよ。。。
多くの方が挙げられている『フォーン・ブース』を筆頭に、『交渉人』『ミッション:インポッシブル』『マッドシティ』等々、本作の内容は過去作品のパッチワークのような状況となっています。ビルから飛び降りようとする謎の男と、それを止めようとする交渉人という構図は、2011年に製作された『ザ・レッジ-12時の処刑台』と同じだし、本作はオリジナリティに欠ける映画だと言わざるをえません。ただし、イベントの詰め込み方が尋常ではないため、ハイスピードで展開されるサスペンスアクションとしては過去作品達を上回る面白さとなっています。監督を務めたアスガー・レスはドキュメンタリー出身で本格的な劇場映画は本作が初となるのですが、その手腕には目を見張るものがありました。トニー・スコットやデヴィッド・R・エリスら、このジャンルの重鎮の急逝が相次ぐ昨今、意外とすぐにメジャー大作を任されることになるかもしれません。。。
以上が作品レビューであり、これからは鑑賞後に気になった点をいくつか挙げていきます。まず、この手の映画は視点を絞れば絞るほど面白くなるので、崖っぷちに立つ主人公と、敵の総本山に潜入する弟たちの様子を交互に映し出すという構成はいただけませんでした。盗みについては素人同然の弟がイーサン・ハントのような技を見せる点も不自然だったし、作品を通じて視点は主人公に固定して弟達の活動は明確に描写せず、終盤でサプライズ的に登場させるという構成にした方がよかったと思います。次に、交渉に失敗した過去を持つマーサーの設定が本筋とうまく絡んでおらず、ほとんど不要な背景となっています。『ダイ・ハード』のパウエル巡査的なポジションを彼女に託したのだと思うのですが、ならば彼女にも見せ場を与えてやるべきでした。悪役側については頭の悪すぎる行動が多く、「そこで主人公を殺したら、さすがに隠蔽しきれないだろ」という局面もありました。もっと賢く振舞ってくれれば、強力な敵となったはずなんですけどね。。。
まぁこの手の映画は2時間の上映時間を楽しむことができれば勝ちですので、以上の指摘も鑑賞後の小言であって、作品の面白さを損なうものではありませんが。