1.《ネタバレ》 もともと原作が好きで、しかも本作の制作が「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」のスタッフということで楽しみに行きました(原作の内容は大分前だったので結構忘れてて、映画視聴後読み直しました)。
基本的に原作に準拠していて、90分ピッタリで終わるところまで原作へのリスペクトがある映画で、非常に良かったのですが、原作を読み直してみると実は原作の話は映画の中の前半部でほぼ終わっていて、後半がオリジナル展開という、サプライズというか原作より一歩踏み込んだ内容の作品になっており、
・あの原作がどう映像化されるだろう?(ジーン監督の15秒CM編集の実物は、スピード感といい素晴らしかった)
・本映画で付け加えられた原作のさらにその先は?
という1本で2倍お得みたいな、楽しみの得られる作品となっておりました。
個人的には、
「これは、僕の物語だ!!!」
とジーン監督が言うところがすごい好きで、これは原作にはなくて、監督の孤独な「編集」作業をより深くえぐっていった結果、エンターテインメントとして人に刺さる独自性のある普遍的表現って何? といったところで、結局作り手のエゴに帰ってくるっていう、映画を観る前に「ブルーピリオド」という漫画の最新刊を読んだんですが、あれで、ごく私的な視点なり感慨でも公の場に作品として表現されると、ごく私的な視点だからこそ広く共感されるというか、そういう作品表現もアリだ、という話をしていて、この映画の編集でも無数のカットの組み合わせの迷宮の中で、どんなエンタメ表現の道筋を見出せるかというところで、ジーン監督のごく私的な「これは、僕の物語だ!!!」にたどり着くのが、良いなあと思った次第です。
この映画では、一般人の、主人公の昔の同級生の友人がオリジナルキャラクターとして登場して、最終的に撮影資金の援助をしてくれて、一昔前のハリウッド映画的な問題の展開(個人の問題→身近な人の間の問題→社会的な問題)をしていって、原作には希薄だった広く社会的な視点を付け加えたのが、わりとうまくできてて良かったし、編集みたいな、結局創作って一人でやるしかない、孤独で大変な作業であるところに、出来上がってくる作品を楽しみに待ってる応援してくれる人たちがいる、という視点を付け加えてくれたのが、とても優しくて良い作品だと思いました。
そんなところです。
あと、原作は、毎巻毎巻「これが最終巻です」宣言しつつ続編が出てるんですけど、今3巻まで行っていて、またスピンオフも出ていてどれも面白いので、映画を気に入った方はぜひ読んでみられるとよろしいかと思われます(おすすめ)。映画の内容は、監督氏が2巻以降の内容を知ってたかどうかわかりませんが、結果的に2巻の内容と同じような境地に踏み込んでいるなあと思ったりなんかしました。
あと、本作って、結局苦労した結果、どんな作品ができたの? を漫画だと1枚絵でバーンと見せるところを、動く映像でどう見せるか? がオチになると思うんですが、途中で断片的に見せてはくれるもののオチの絵は出てこない(強いて言うなら原作準拠の真ん中ですべて出てしまった)ので、そこがちょっと物足りなく感じられんくもないとは思いました。