2.《ネタバレ》 テオ・アンゲロプロスは「霧の中の風景」や「放送」は文句なしの傑作だと思うが、正直本作は言うほど傑作と呼べる映画だろうか。
確かに、素晴らしい映画だとは思う。 旅芸人の一座が時空を越えてギリシャの混乱期、戦争を交えた15年間を渡り歩くロード・ムービー。
戦争と密告で殺し合う一家の闘いはギャング映画のような壮絶さも感じるし、アンゲロプロスが危険をかいくぐって撮りあげたという鬼気迫る映像には敬意を表せざる負えない。
でも3時間50分は長すぎる。
dvdにしたって2時間チョイでようやくチェンジだ。それまでが大変だよ。
ところどころ楽しい大合唱や悲痛な場面があって胸に迫るものがあったが、あの馬鹿げた長回しは人を殺しにかかっているとしか思えない。
この映画のファンはこう言うだろう。
「感情移入やストーリーだけが映画じゃねんだよっ!」と。
だからって余りにロングショットで延々と撮るシーンが多すぎんだろうがあっ!!
アンゲロプロスにしたって「霧の中の風景」はロングとクローズのバランスが素晴らしかった。
だが、この映画は上映時間の長さに加えて戦争の悲惨さで心まで重くなる。
加えてカットが変わる事無く時代が変わるので、その辺で混乱をきたす人もいるだろう。
その混乱は旅一座が散々味わってきた苦しみでもあるし、この映画の殺人的な退屈さは、それを一緒に体験できるような感覚だ。
ラストの生き残った一座たちが、再び冒頭の駅に戻ってくるシーン。あの瞬間の言い知れぬ達成感・・・!あの瞬間を見るだけでもこの映画を見る価値はあるだろう。