1.《ネタバレ》 これほど見事に省略技法と繰り返し話法を駆使する映画は初めてです。ラストの小波の家を訪れた赤西蠣太の「今日はあまりゆっくりできなくて…」の三回繰り返し、そしてウェディング・マーチで閉めるセンスにはもう脱帽。確かに夭逝せずに戦後まで映画界におれば、伊丹万作は日本を代表する巨匠に間違いなくなっていたでしょう。あの片岡千恵蔵が不細工男に扮してラブコメするのが観られるなんて、予想もしませんでした。また原田甲斐との二役も見事な貫録で、これが同一人物とは信じられないですよね。この映画の魅力を語るにはモダンなカメラワークを外すことはできません。冒頭の唐傘がクルクルと回るところやクライマックスの寛文事件の立ち回りなど、真上からとらえたショットはバスビー・バークレーのミュージカル映画を彷彿させるセンスです。 古い映画ですけど、観て絶対に損はないですよ。