1.あのころ由貴ちゃんが好きだったから見たんだけど、いま思うと、これが相米映画の最高傑作じゃないかと思う。こんなジャンバルジャンとコゼットみたいな話が、日本のどこにも存在するわけないし、こんなストーリーもあるわけないし、そもそも時代設定もまったく不明だし、こんなものを作ろうと思った動機もまったく不明。どんな欲望があるのかぜんぜん分からない。『台風クラブ』みたいな話なら、まだ現実にもあるかもしれないけど、『雪の断章』の話だけはありえない。こんなありえない物語を、長回しのリアリズムで撮ってしまった時点で、これは異常な傑作なんじゃないかと思う。テント芝居をそのまま映画にしたようなもんだといわれればそれまでかもしれないけど、それを抜きにして考えれば、この作品世界はあまりに異常なところにいっちゃってます。