2.《ネタバレ》 私は最初のリメイク版キングコング(1976年)を小学生のときに映画館で見ました。そのとき「少数の理解者の声は全く届かずに惨殺されてしまう」というコングの結末が悲しくて仕方ありませんでした。その後も、コングと似た作品をテレビで幾つか見ましたが、いずれも結末は同じようなものでした。
こうして十数年後、たまたまレーザーディスク(懐かしいですね!)を試聴する機会があり、この作品を見てみました。それまでに蓄積した悲しみが全て洗い流されるような救われる思いで一杯になりました。たとえ作り話・理想論であっても、このような作品は必要だと思いました。
ジャンルとしてはファミリー映画なのでしょうが、公開当時は「キングコングの再来」と宣伝され、怪獣映画を期待した観客の評判はよろしくなかったようです。しかし、おそらく、アメリカではテレビで放映されるようになって、子供たちから愛されたのではないでしょうか。「パパ、ママ、どうしてジョーは、撃ち殺されることになったの?。ライターの火でジョーを苛めていたオジサンがライオンに襲われたとき、ジョーはオジサンを助けていたよ。ジョーは優しいよ。悪いのはあのオジサン達じゃないの?」「「ジョー、早く逃げて!」「おまわりさん、撃たないで!」「頑張れ、ジョー!」といった当時のアメリカの子供達がテレビの前で熱中する姿が目に浮かびます。その積み重ねが、1998年のリメイク「マイティ・ジョー」につながったのではないか…と推察しています。
なお、良心の塊のような当作品ですが、残念ながら、今となっては当時の社会世相による限界が垣間見える場面もあります。それは、成長したジョーが初めて登場するシーンにおける【現地で雇ったアフリカ人スタッフは、ジョーを見ておっかなビックリ逃げていく一方、カウボーイ達は捕獲しようと近づいていく】という場面です。こうした「白人は勇敢で、黒人・有色人種は臆病」といったステレオタイプの描写は、当時のアメリカ映画に散見していたようですが…社会心理学者から「差別意識を助長する」と言われるようになったようです。勿論、映画全体を否定する要素ではありませんが、リメイク版では、このような描写はなく「映画は時代を映す鏡」であると、つくづく思います。
さて、採点ですが…もともとハリーハウゼン作品への興味から見たのですが、私にとっては、特撮作品の域を超えた位置づけの映画になりました。現在、家にあるのはビデオ収録版ですが、時々見返しては元気をもらっています。ウィリス・H・オブライエン氏やハリーハウゼン氏をはじめとする、当時、製作に携わった皆さんへの敬意を込めて10点を献上いたします。
*平成30(2018)年12月24日(月) 追記: マイティ・ジョー(1998年)に投稿したのを機に、改行や、大勢には影響しない範囲で若干の文面を加えて修正しました。